追記(2026年9月)
本記事は2025年12月10日に、北海道庁の本庁と振興局の双方で勤務した経験をもとに執筆したものです。実名での発信へ移行するにあたり、当時の問題意識を残しつつ、特定の職員や所属を評価するように読める表現を整理し、本庁と振興局の役割の違い、人材育成、キャリア形成という観点から内容を大幅に加筆・修正しています。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
同じ北海道庁でも、本庁と振興局はかなり違う
一般の方から見ると、北海道庁の職員は、本庁で働いていても振興局で働いていても「同じ道職員」に見えるかもしれません。
しかし、実際に両方を経験してみると、求められる仕事の性質やスピード感、関係する相手、身につきやすい能力にはかなり大きな違いがありました。
私は入庁後、本庁で庶務や予算関係の仕事を経験した後、振興局へ異動し、防災関係の業務を担当しました。
その経験から感じたことを一言で整理すれば、本庁は「政策形成と組織内外の調整に近い場所」、振興局は「地域の現場と行政組織をつなぐ場所」です。
どちらが上、どちらが下という話ではありません。
同じ北海道庁という組織の中でも、置かれている役割が違えば、仕事の見え方そのものが変わる。私はその違いを、異動して初めて実感しました。
本庁―情報と調整の中心で働く
本庁勤務では、議会、予算、国の制度、庁内の各部局など、複数の動きを同時に見ながら仕事を進める必要がありました。
自分の担当業務だけを見ていればよいわけではありません。
道議会の日程が動けば、それに合わせて資料や答弁を整える。国の制度や財源措置が変われば、道の予算や事業計画も影響を受ける。庁内の他部局との調整が必要になれば、相手側の事情も踏まえて話を進めなければなりません。
特に予算関係の仕事では、国の政策決定や財源措置の時期と、道の予算編成スケジュールが必ずしもきれいに一致しないこともありました。
その場合、限られた時間の中で情報を集め、関係課と調整し、上司や財政部局へ説明する必要があります。
プレッシャーは大きい一方、情報の集まる場所で仕事をしている実感もありました。
政策がどのように予算へ落とし込まれ、議会や組織内部の調整を経て実施されていくのか。その過程を間近で見ることができた経験は、その後に民間企業で働くようになってからも役に立っています。
私は比較的、情報量が多く、複数の関係者の思惑を整理しながら動く環境の方が性格に合っていたのだと思います。
振興局―地域の最前線で幅広い仕事を担う
一方、振興局に異動すると、仕事の景色は大きく変わりました。
本庁が道全体の制度や予算を扱う場所だとすれば、振興局は市町村や地域の関係機関と日常的に接し、制度を現場で動かす役割を担います。
私が担当した防災業務では、市町村をはじめ、警察、消防、自衛隊など、さまざまな機関との連絡調整が必要でした。
平時には訓練や会議、資料作成などを進めながら、災害や警報があれば予定していた仕事の優先順位が一気に変わります。
特に印象に残っているのは、一つの担当係が外部機関との窓口を幅広く担っていたことです。
訓練であれば、企画、資料作成、市町村との調整、関係機関との段取り、当日の運営まで、一連の業務が同じ担当に集中することがあります。
これは、少人数で地域実務を担う出先機関ならではの特徴でもあるのでしょう。
また、過去案件を確認しようとした際、最終的な決裁文書は残っていても、そこに至る検討過程を手元の資料だけでは十分に追えないこともありました。
職員が異動した後に、過去の経緯や判断理由をどのように組織として引き継ぐのか。振興局勤務を通じて、行政における記録と組織知の継承の重要性も感じました。
本庁に比べれば、組織の規模は小さく、地域の関係者との距離は近くなります。
その一方で、固定化された人間関係や限られた人員の中で幅広い業務を回す難しさもあります。
私自身は、その仕事の進め方に最後まで十分なじみ切れない部分がありました。
どちらが上ではなく、求められる能力が違う
本庁と振興局を経験して強く感じたのは、同じ道職員であっても、配置によって鍛えられる能力が違うということです。
本庁では、庁内調整、議会対応、予算、政策形成、国との関係など、広い視野で情報を整理し、短い時間で説明する力が求められます。
一方、振興局では、市町村との関係構築、地域事情の把握、現場対応、複数機関との連携、突発事象への対応力が重要になります。
どちらか一方だけが行政に必要なのではありません。
北海道のように広大な自治体では、本庁で制度を組み立てる機能と、振興局で地域の実情を把握し実際に動かす機能の両方が必要です。
むしろ重要なのは、この二つが十分につながっているかどうかです。
本庁が制度だけを見て地域の実情を見失ってもいけない。振興局が目の前の地域実務だけで完結し、道全体の政策とのつながりを見失ってもいけない。
人事異動を通じて双方を経験することには、その意味では大きな価値があると思います。
「配属ガチャ」で終わらせない人事へ
当時の私は、配属先によって働き方があまりにも変わることを、よく「配属ガチャ」と表現していました。
実際、本庁に配属されるのか、振興局に配属されるのか。政策部門なのか、現場部門なのか。どの上司や同僚と一緒になるのか。
最初の数年間の配置によって、職員が経験する仕事や形成される仕事観は大きく変わります。
ただ、今は「当たり部署」「外れ部署」というだけで整理するのは違うと思っています。
北海道という広域自治体である以上、本庁と振興局の仕事が大きく異なること自体は避けられません。
問題は、その違いを人材育成やキャリア形成にどうつなげるかです。
本庁で身につけた調整力を地域現場でどう生かすのか。振興局で得た地域感覚を、将来の政策形成にどう反映するのか。
本人の適性や希望だけでなく、これまでの経験を次の配置でどう生かすのかが、職員本人にも組織にも見える人事であれば、異動の意味は大きく変わるはずです。
私自身は本庁の働き方の方が性格に合っていました。
しかし、振興局で働いたからこそ、本庁から見ていた北海道と、地域の現場から見た北海道が同じではないことも知ることができました。
同じ北海道庁の中に、これだけ異なる二つの仕事の世界がある。
その違いを単なる「配属ガチャ」で終わらせず、組織全体の人材育成につなげられるか。
広域自治体である北海道庁にとって、重要な人事課題の一つではないでしょうか。
以上、本庁と振興局で働いて感じた違いについてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和7(2025)年12月10日
※この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。





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