追記(2026年9月)
本記事は2026年3月15日に、北海道庁の春の人事異動と、それに伴う引越し実務について書いたものです。実名での発信へ移行するにあたり、「人事異動は組織にとっては一行の発令でも、本人にとっては生活基盤を丸ごと組み替える作業である」という点に軸足を置いて再構成しました。あわせて、赴任旅費や相見積もりの取扱いについても、現在確認できる制度に沿う表現へ整理しています。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
年度末に始まる「異動」と「生活再構築」
北海道庁で働いていた頃、毎年3月になると職場全体に独特の落ち着かなさがありました。
誰がどこへ異動するのか。自分は対象になるのか。周囲の顔ぶれはどう変わるのか。
私が在職していた当時、転居を伴う異動では3月中に内示を受け、4月1日付で新しい所属へ移るという流れが一般的でした。
同じ札幌市内で所属が変わるだけなら、生活そのものは大きく変わりません。
しかし、札幌から地方の振興局へ、あるいは地方から札幌へ戻るような異動になると、話は別です。
新しい住居を探し、引越し業者を確保し、電気・ガス・水道・通信環境を整え、住所変更などの手続きを進める。
しかも、それを年度末の通常業務と並行して行わなければなりません。
人事上は一行の「異動」であっても、生活者の側では、その日から生活基盤を組み直す一大作業が始まります。
人事異動は一行、引越し準備は一大作業
3月は、職場側も落ち着いている時期ではありません。
決算や年度末の処理、次年度に向けた準備、後任への引継ぎなどが重なります。
そこへ、自分自身の引越し準備が加わります。
新居探し、引越し業者の日程確認、各種契約の変更、荷造り。
前に書いたインターネット環境や自家用車の問題も、すべてこの時期に一度にやってきます。
特に3月下旬は引越し業界そのものが繁忙期です。
希望する日程に空きがあるとは限らず、住居が決まっても引越し業者が確保できなければ、生活は動きません。
転勤制度そのものには、広い北海道のさまざまな地域で経験を積むという意味があります。
一方で、異動を命じる側のスケジュールと、実際に生活を移す側のスケジュールが完全に一致するわけではありません。
私は在職中、この違いを毎年のように感じていました。
公費負担だからこそ必要になる「相見積もり」
転居を伴う赴任については、一定の要件や上限のもとで、赴任旅費として引越しに要する費用が支給される仕組みがあります。
公費で支出する以上、当然ながら、好きな業者を無条件で選べばよいという話ではありません。
現在確認できる北海道教育庁の赴任旅費の案内でも、引越業者を利用する場合には複数業者から見積書を取り、条件に沿って業者を選定する運用が示されています。
制度として考えれば、これは合理的です。
税金を使う以上、価格や条件を比較し、適正な支出であることを確認する必要があります。
一方、その実務を行うのは、まさに引越し準備の真っただ中にいる職員本人です。
複数の業者へ連絡し、日程を合わせ、見積りを取り、条件を比較する。
しかも繁忙期なので、必ずしも希望どおりに見積りや作業日を確保できるとは限りません。
「相見積もり」は、公費支出の適正性を確保するためには必要な手続きです。
ただ、制度として合理的であることと、生活者として負担が軽いことは別の話だと思います。
制度としては合理的、生活者としては負担が重い
行政の制度は、どうしても全体の公平性や支出の適正性を基準に設計されます。
一方、異動する本人にとって重要なのは、限られた時間の中で新しい生活を始められるかどうかです。
この二つは対立するものではありませんが、実務の現場では緊張関係が生まれます。
公費支給があるからといって、職員側の手続き負担がなくなるわけではありません。
住居探しも、契約変更も、荷造りも、見積取得も、本人や家族が進めます。
また、引越し業者や住居が確保できないケースも現実にはあります。
近年の赴任旅費に関する案内では、こうした事情を踏まえて着任時期を一定程度調整できる取扱いも示されています。
つまり、制度側もまったく生活実態を見ていないわけではありません。
それでもなお、異動時期が年度末に集中する以上、職員側の負担が大きくなりやすい構造そのものは残ります。
私は、そこを単に「職員が準備すればよい」とだけ整理するのではなく、人事制度の運用上の課題として見てもよいと思っています。
転勤を前提とするなら、転勤しやすい制度設計も必要
北海道庁のような広域自治体では、全道をまたぐ人事異動そのものをなくすのは現実的ではありません。
本庁と振興局、地域ごとの行政現場を経験することには、人材育成上の意味もあります。
だからこそ、異動を前提とする組織には、「異動させる仕組み」だけでなく「無理なく赴任できる仕組み」も必要だと思います。
赴任旅費制度を分かりやすく案内すること。
見積取得のルールを早い段階で周知すること。
繁忙期に業者を確保できない場合の取扱いを明確にすること。
住居や引越しの事情に応じて、必要な範囲で柔軟に運用すること。
こうした小さな仕組みの積み重ねだけでも、転勤に伴う負担は変わります。
人事異動の辞令には、引越しの段ボールも、見積書も、新居探しも書かれていません。
しかし、職員本人にとっては、それらすべてを終えて初めて「異動」が完了します。
公費を適正に使うための相見積もりは必要です。
一方で、その手続きを短期間でこなす職員側の負担も確かにあります。
転勤を前提とする組織だからこそ、「どこへ異動させるか」だけではなく、「どうすれば無理なく赴任できるか」まで制度として考える必要があるのではないでしょうか。
以上、北海道庁の異動と引越し実務についてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和8(2026)年3月15日
この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。
参考資料:北海道教育庁「赴任される職員の方へ」/北海道職員採用案内


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