追記(2026年9月)
本記事は2025年12月4日に、北海道庁勤務時代のPC環境を振り返って執筆したものです。実名での発信へ移行するにあたり、当時の問題意識やユーモアを残しつつ、内部運用を必要以上に具体化している記述や、特定の職員・職種への不必要な言及を削り、行政DX・IT調達・情報セキュリティと業務効率の観点から内容を整理・加筆しています。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
仕事を始めるまでに時間がかかる
北海道庁で働いていた頃、日常的にストレスを感じていたものの一つが、業務用PCの動作の遅さでした。
私が入庁した当時、すでに世間では高速な端末や新しいOSが普及していましたが、庁内では性能面で古さを感じる端末も少なくありませんでした。
起動、ログイン、業務システムへの接続。ひとつひとつは数分程度でも、毎朝積み重なると無視できない時間になります。画面が立ち上がるまでの間に、机を片付けたり、お湯を沸かしたりして待つこともありました。
PCは仕事を始めるための道具です。ところが、その道具が動き出すまで待たなければ仕事が始められない。当時の私は、半ば冗談で「始業前にPCを起こす仕事が必要なのではないか」と思っていました。
もちろん、すべての端末が常に遅かったわけではありませんし、時期や所属、端末の状態によって差もありました。ただ、職員の多くが日常的に触れる道具として、もっと改善の余地があるのではないかと感じていました。
セキュリティと使いやすさの両立
行政機関のPC環境は、一般家庭や民間企業の端末と同じようには扱えません。
個人情報や機密性の高い情報を扱う以上、庁内業務環境とインターネット閲覧環境を分けるなど、情報セキュリティを重視した運用が必要です。
私が勤務していた当時も、外部サイトを確認するだけで複数の操作が必要になることがありました。セキュリティ上の合理性は理解できますが、操作が増えるほど職員の負担も増えます。
問題は、セキュリティを弱めればよいということではありません。必要な安全性を確保しながら、日常の業務負担をどこまで減らせるか。その両立こそが行政DXの重要な課題だと思います。
一定期間利用されていない端末について、管理上の確認を求められることもありました。こうした運用にも理由はありますが、管理のための管理になっていないか、定期的に見直す必要はあるでしょう。
なぜ簡単には更新できないのか
現場の職員が「このPCは遅い」と感じても、個人の判断で自由に買い替えられるわけではありません。
行政機関では、多数の端末を標準化し、一括で調達・管理する必要があります。予算、契約、セキュリティ、保守、ソフトウェアの互換性など、考慮すべき条件も多くあります。
この仕組みには合理性があります。職員ごとに好きな端末を使えば、管理コストも情報漏えいのリスクも大きくなるでしょう。
一方で、一括調達には「現場で不便が生じても、すぐには変えられない」という弱点があります。不便だと分かっていても、次の更新時期まで使い続ける。個別最適よりも組織全体の標準化を優先する。その結果として、日々の小さな待ち時間が積み上がっていきます。
当時の私には、「効率より規則を優先している」ように見える場面もありました。ただ、今振り返れば、規則そのものが悪いというより、調達時に職員の生産性まで含めて評価する仕組みが十分だったのか、という問題だったのだと思います。
安いPCは本当に「安い」のか
自宅では、2~3万円程度で購入した中古のノートPCを使っていました。もちろん、道庁の業務に私物PCを持ち込んで使っていたわけではありません。
ただ、自宅でそのPCを使った時、クリックすればすぐ反応する、画面がすぐ切り替わるという、ごく当たり前の操作感に驚いたことを覚えています。
そこで考えたのが、「端末価格だけを安く抑えることは、本当にコスト削減なのか」ということです。
例えば、職員一人が起動や処理待ちで毎日数分を失うだけでも、数千人規模の組織では相当な時間になります。その時間にも人件費は発生します。待っている数分は、住民対応や政策立案には使えません。
高性能なPCを配ればすべて解決するわけではありません。しかし、調達価格だけでなく、職員の待ち時間、システムの安定性、保守負担まで含めた総コストで考える必要があります。
安い端末を買った結果、職員の時間を大量に失うのであれば、それは必ずしも「安い調達」とは言えないのではないでしょうか。
行政DXは職員が毎日使う道具から
私は当時、冗談半分に「固まっているのはPCだけではなく、組織の仕組みの方ではないか」と思うことがありました。
古い道具を使い続けること自体が悪いわけではありません。問題なく使えるものを長く使うことは、むしろ合理的です。しかし、業務効率を明らかに下げているのであれば、更新しないことにもコストがあります。
DXというと、新しいシステムを導入したり、住民向け手続きをオンライン化したりする話が注目されます。それらは重要です。しかし、職員が毎日使うPCや業務環境を改善することも、同じくらい重要なDXだと思います。
職員がPCの起動や処理待ちで失っている数分、数十分を取り戻し、その時間を住民サービスや政策立案に使えるようにする。行政サービスを良くしたいのであれば、行政職員が仕事をしやすい環境を整えることも必要です。
道具への投資は、職員を楽にするためだけの福利厚生ではありません。行政全体の生産性を高め、限られた人員でより良い公共サービスを提供するための基盤です。
以上、北海道庁のパソコン事情についてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和7(2025)年12月4日
※この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。



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