【観察記録】道庁PCのスペックが低すぎて、私物の中古ノートの方が優秀だった件につきまして

北海道庁

関係者各位

いつも大変お世話になっております。
元道庁職員鈴木邪道でございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。

「公務員の非効率」を象徴する鉄の箱

北海道庁のPCは、控えめに言って“時代に取り残された鉄の箱”でした。
起動に5分以上かかるのは日常。画面が立ち上がるまでに、お湯を沸かして味噌汁を作れます。

2019年時点では Windows7 が圧倒的多数派、一部では Windows Vista の化石端末 が息をしており、平成の遺産が令和の道庁を支配していた光景は、いま思い出してもなかなかシュールです。

もちろん、当時は「いつアップデートするの?」という声が職場に漂っていましたが、PCは“3年ごとの貸借契約”で一律調達されるため、途中でOSが化石化しようが関係ありません。
結果として、3年前の「標準下位スペック」 が職員の業務効率を容赦なく縛り続けるという、なかなかの仕様になっていました。

立ち上がらない始業

私が最も困ったのは、とにかく始業が始業にならないことです。

  • 起動5分
  • ログインに1~2分
  • システム起動に1分
  • 庁内システム接続にまた1分

この合計10分近い“儀式”を突破しないと、書類ひとつ作れません。
結果どうなるかと言うと、「早く出勤しないとPCの起動が間に合わない」という異常な状況が日常化するのです。
私は自主的に1時間前から登庁するタイプでしたが、パソコンの起動時間を考慮した早出残業代とか請求してもいい案件だと思います。

さらに地獄なのが、情報政策課が管理している“幽霊PC生存確認システム”。
庁内ネットワークに一定期間接続しないと「このPC、息してないよ」通知が飛び、使用者が休んでいようが壊れていようが、とにかく起動が義務付けられていました。
これを少しでも漏らすたびに意味の分からない起動記録と「なぜ一定期間起動しなかったのか」の報告書を書かされます。

鈴木邪道
鈴木邪道

あれ……俺はいま何の仕事をしているんだ?

と天井を見つめる瞬間が何度もありました。

“あっちの世界”と“こっちの世界”─ネット閲覧という名の異世界転移─

道庁には、庁内業務システムとインターネット閲覧用のブラウザが完全分離されていました。
たとえば、メールで届いたリンクを開こうとすると、

  1. 庁内ネットワーク → 開けない
  2. 外部ネットワークに切り替える → IDとパスワード入力して10秒待つ
  3. また庁内ネットワークに戻る → 反応しない
  4. PC固まる → 再起動
鈴木邪道
鈴木邪道

(#^ω^)・・・

この流れで午前中が終わることすらあります。
私はこれを、道庁版“異世界転移もの”と呼んでいました。
ただしチート能力は何も得られません。

銀行さんなんかでもこのような仕様になっているようです。
まあ、セキュリティの観点ですから分からなくもないんですが、そんなにセキュリティが大事ならなんで生保レディは出入り自由なんだよと思っていました。

この地獄を経験したあとで、私物の中古ノートPC(2~3万円の安いやつ)を使ったときの衝撃は忘れられません。

え? クリックしたら動く…(当たり前です)?

道庁PCがいかに異常だったかを体感した瞬間でした。

職場に漂う「諦め」と「イラ立ち」

当然ながら、職員の反応もさまざまです。

●中堅職員
イライラを隠さない。
PCのフリーズが増えるほど、タバコ休憩と後輩のあげ足取りが増加。
●口癖
「今日、ご機嫌ナナメだな」
「またぐるぐるしてるわ」
「この子、もう寿命かもしれん」
──PCを“人格化して扱う文化”が芽生えるのは、壊れかけの道庁PCあるあるです。

●上司
意外と何も言わない。

現場の悲鳴は届かず、「情シス(情報政策課)と調整して」とすべて丸投げ。
結果として、担当者が上司の無理解と情シスの規定の間で板挟みになるという、負荷だけが担当職員に蓄積する構造が生まれていました。

“なぜ更新しないか”の構造的理由

このPC地獄には、理由があります。

  • PCは「取得」ではなく月額の貸借契約
  • 数百〜数千台の一律スペック調達が必要
  • 中途更新がほぼ不可能
  • セキュリティ要件で勝手に買い替えられない
  • 上層部はPC事情をほぼ把握していない
  • 問題が起きると担当と情シスで応急処置

結果として、道庁のPCは効率ではなく規則を最適化した状態で運用され続けていました。

「道具からして非効率」という皮肉

道庁のPCの遅さは、単なるスペックの話ではありませんでした。
もっと根本的な、“効率よりも手続き、現場よりも前例”という組織の性質そのものを象徴しているように思えます。

私は何度も思いました。
ここではPCだけでなく、人間の働き方まで“アップデート前のまま”なんじゃないか?
”安定”の名の下でIT投資が後回しになり、その結果として職員の時間と労力が削られる。
それでいて“働き方改革”だけは声高に叫ばれる。
この矛盾は、いまも鮮明に覚えています。

もはやPCより人間の方が固まっていた

起動しないPC、フリーズする画面、異世界転移しないとネットが見られない仕様。
これらは単なる不便ではなく、道庁という組織の“メタファー”でした。

  • 変化しない
  • 変えられない
  • 文句は言うけど変える気はない

そんな空気が凝縮していたように思います。
もしかしたら道庁で一番働いていたのは、あの低スペックPCたちだったのかもしれません。
何度固まっても、叩かれながら、無理やり再起動されながら、それでも黙って働き続けていたのですから。

以上、北海道庁のパソコン事情についてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。

令和7(2025)年12月4日

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
北海道庁生存戦略部
異端企画局
内部是正推進課非公式記録整理係
主事 鈴木邪道
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

コメント

タイトルとURLをコピーしました