追記(2026年9月)
本記事は2025年11月30日に、公務員の「安定」という言葉への違和感をもとに執筆したものです。実名での発信へ移行するにあたり、当時の問題意識を残しつつ、公務員全体を一括りにしているように読める表現や、感情的な比喩を整理し、現在の視点から一部加筆しています。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
「公務員は安定している」という通念への違和感
学生時代から、「公務員は安定していていいね」と言われることがよくありました。
確かに、公務員は民間企業のように勤務先が倒産するという意味でのリスクは小さく、給与も制度に基づいて支給されます。雇用の継続性という点では、安定した職業だと言ってよいでしょう。
一方で、私は道庁で働く中で、「安定」という言葉には別の側面もあると感じるようになりました。
雇用が安定していることと、働く本人が精神的に安定していること。将来に納得していること。自分のキャリアを自分で選べること。これらは必ずしも同じではありません。
当時の私が違和感を持っていたのは、「安定」という言葉が、ときに職場環境や働き方を見直さない理由として使われているように見えたことでした。
現場で感じたのは「安定」より「停滞」だった
私が北海道庁で勤務していた頃、職場では「なんだかんだ公務員は安定しているから」という言葉を耳にすることがありました。
それ自体は間違っていません。しかし、業務負担が重いときや、働き方に疑問を感じているときまで、その一言で話が終わってしまうことには違和感がありました。
給与や雇用が安定していても、人事異動によって仕事内容や勤務地は大きく変わります。慣れた職場で働いていても、次の年度には全く異なる分野を担当することがあります。
行政組織において異動は、人材育成や組織運営のために必要な仕組みです。一方で、本人から見れば、どの仕事をどこで担当するのかを自分だけでは決めにくいという不確実さがあります。
そう考えると、公務員は「雇用は安定しているが、仕事の中身まで安定しているわけではない」職業でもあります。
小さな改善提案から見えた現状維持の力
入庁3年目、私は職場のレイアウトを見直す仕事に関わりました。
保存期限を過ぎた書類を整理し、動かせなくなっていた書架を見直し、職員が仕事をしやすい配置へ変える。DXやペーパーレス化が意識され始めていた時期でもあり、私自身は前向きに取り組んでいました。
その説明をしていた際、「特に今困っていないのであれば、変えなくてもよいのではないか」という趣旨の意見を聞いたことがあります。
もちろん、変化には手間もコストも伴います。全てを新しくすればよいわけではありません。行政では継続性や慎重さも重要です。
ただ、この経験から私は、「困っていないなら変えない」という考え方が積み重なると、改善の機会そのものを失ってしまうのではないかと考えるようになりました。
安定とは、本来、何も変えないことではありません。必要な変化を受け入れながら、組織やサービスを持続させることだと思います。
安定していても、心まで安定するとは限らない
私自身、道庁勤務中に心身の余裕を失った経験があります。周囲にも、業務負荷や異動、人間関係などを理由に疲弊している職員がいました。
だからこそ、「公務員だから安定している」という言葉だけでは、職場の実態を十分に表せないと感じます。
安定した身分や休暇・休職制度があることは、大きな安心材料です。必要な人が制度を利用して休むことも、当然の選択肢です。
しかし、制度が存在していても、「ここで働き続けなければならない」「転職するのはもったいない」と本人が思い込んでしまえば、選択肢は狭くなります。
私は道庁を辞めてから、職場を変えることも、自分の生活や健康を守るための一つの選択なのだと実感しました。
公務員として働き続けることにも価値があります。大切なのは、安定しているから残るのではなく、自分が納得してその仕事を選び続けられているかどうかだと思います。
本当に必要なのは「安心して変われる環境」
私は今、「安定」と「停滞」は分けて考えるべきだと思っています。
安定は、変化を拒むことではありません。環境が変わっても、必要な支援を受けながら働き続けたり、新しい仕事に挑戦したり、時には別の道を選んだりできる状態こそ、健全な安定ではないでしょうか。
行政組織にも同じことが言えます。制度や前例には、行政の公平性や継続性を支える重要な役割があります。一方で、それらを守ること自体が目的になれば、社会や市民生活の変化に対応しにくくなります。
働く人にとっても、組織にとっても、本当に必要なのは「何も変わらない環境」ではなく、「安心して変われる環境」なのだと思います。
雇用の安定を大切にしながら、職員が挑戦できること。自分のキャリアを考え直せること。必要なときには休み、異なる道も選べること。そして組織自体も、必要な改善をためらわないこと。
私は、そうした状態まで含めて初めて、「安定している職場」と呼べるのではないかと考えています。
以上、公務員の「安定」とは何かについてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和7(2025)年11月30日
※この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。



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