追記(2026年9月)
本記事は2026年1月11日に、北海道庁勤務時代に受けた人事評価についての実感をもとに執筆したものです。実名での発信へ移行するにあたり、北海道が公表している人事評価制度の内容を確認し、「評価が処遇にほとんど影響しない」といった不正確な表現を修正しました。そのうえで、制度としての人事評価と、職員が実際に感じる納得感・人材育成との間にどのような課題があるのか、という観点から内容を大幅に整理しています。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
道庁にも人事評価制度はある
「今は公務員にも人事評価制度があって、働きぶりによって給与や昇任に差が出るのでしょう?」
公務員の働き方について話していると、こうした質問を受けることがあります。
結論から言えば、北海道庁にも人事評価制度はあります。
北海道が公表している資料によると、知事部局では、職務遂行の過程で発揮された能力を見る「能力評価」と、設定した目標に対する達成状況などを見る「業績評価」を実施しています。
また、評価結果は原則として本人に開示され、勤勉手当の成績区分、昇給区分、昇任、分限処分の契機などに活用されています。
したがって、かつて私が感じていたように「評価制度は存在するが、処遇にはほとんど関係しない」と単純に言い切るのは正確ではありません。
制度上は、評価結果を人事管理へ反映する仕組みが明確に設けられています。
制度上は処遇に反映される。ただし「実感」は別問題
では、人事評価が給与や昇任に反映されるのであれば、職員は「高く評価されれば報われる」と強く実感して働いているのでしょうか。
ここは、制度上の仕組みと、私が職員として感じていた実感を分けて考える必要があります。
私自身、人事評価を受けていた当時、評価結果がその後の給与や配置、キャリアにどうつながっているのかを、強い手応えとして感じることは多くありませんでした。
もちろん、これは制度上反映されていないという意味ではありません。
昇給や勤勉手当には評価結果が用いられていますし、昇任などにも活用されています。
ただ、職員の立場から見れば、「今回の仕事のどの部分が評価され、それが今後の処遇やキャリアにどうつながるのか」が分かりにくければ、人事評価はどうしても年に一度の手続として受け止められやすくなります。
評価制度が存在することと、評価される側がその意味を実感できることは、同じではありません。
行政の仕事はそもそも評価が難しい
行政の人事評価が難しい理由の一つは、仕事の成果を単純な数字に置き換えにくいことです。
民間企業であれば売上や利益など、比較的分かりやすい指標を置ける職種もあります。
しかし行政では、期限内に正確に処理する、関係者と調整する、トラブルを未然に防ぐ、住民へ丁寧に説明する、といった仕事が多くあります。
何も問題が起きなかったこと自体が成果である場合もあります。
また、同じ職位でも担当業務の難易度や繁忙度、関係者の多さは大きく異なります。
案件数だけを比べても公平とは限りませんし、目立つ成果だけを評価すれば、日常的な維持管理や調整業務が過小評価されるおそれがあります。
これは公務員に限った話ではありません。
民間企業でも、バックオフィス、物流、保守、品質管理、調整業務など、個人の成果を売上だけでは測れない仕事は数多くあります。
評価制度を作ること以上に、「何を良い仕事とみなすのか」を組織内で共有することが難しいのだと思います。
問題は「評価があるか」より「納得できるか」
人事評価が機能するためには、点数や区分を付けるだけでは足りません。
評価された側が、「なぜこの評価なのか」を理解できることが重要です。
北海道の制度でも、評価結果を原則として本人へ開示し、評価結果を踏まえて指導・助言を行う仕組みが設けられています。
一方、実務上は、管理職が多くの部下を抱えながら、それぞれの仕事の難しさや成果をどこまで精密に把握できるかという課題があります。
また、評価者が替われば、仕事の見方や重視する点に多少の違いが出ることも避けにくいでしょう。
だからこそ、評価の結果そのもの以上に、評価根拠を言葉で説明し、本人と認識をすり合わせることに意味があります。
職員が「何を改善すればよいのか」「何が強みとして認められたのか」を理解できなければ、評価は人材育成にはつながりません。
逆に、結果に納得できなくても、理由や期待されている役割が明確であれば、次の行動を考える材料にはなります。
人事評価を人材育成につなげられるか
私が今、人事評価制度について最も重要だと思うのは、評価によって職員同士に細かな順位を付けることではありません。
評価結果を、その後の人材育成や配置へどうつなげるかです。
例えば、調整力を評価された職員には、より多くの関係者をまとめる仕事を経験してもらう。
企画力に強みがある職員には、政策立案に関われる配置を考える。
一方で、特定の能力に課題があるなら、研修や上司からの指導、業務経験を通じて補える機会をつくる。
こうして初めて、人事評価が「過去一年の採点」から「次の成長のための材料」へ変わります。
また、仕事を任せやすい職員へ業務が集中することがあります。
その状態が続き、本人が「頑張るほど仕事だけが増える」と感じれば、人事評価への納得感も下がります。
評価だけを見るのではなく、仕事の配分、配置、育成、処遇まで一体として考える必要があると思います。
評価制度の目的は「差を付けること」だけではない
道庁の人事評価は、本当に機能しているのか。
制度だけを見れば、能力と業績を評価し、その結果を給与や任用などへ反映する仕組みは整えられています。
したがって、私は今、「機能していない」と単純に結論づけるのは適切ではないと考えています。
一方で、制度があることと、それが職員の納得感や成長実感、適材適所につながっていることは別問題です。
評価結果が本人にとって何を意味するのか。
次にどのような能力を伸ばせばよいのか。
組織はその職員に何を期待しているのか。
そして、その評価が配置や業務配分、人材育成へどうつながったのか。
そこまで見えて初めて、評価制度は日々の仕事と結びつくのだと思います。
人事評価の目的は、単に職員同士へ順位を付けることではありません。
組織として、誰に何を任せ、どの能力を伸ばし、どのように人を育てるかを考えるための材料にすることではないでしょうか。
評価すること自体を目的にせず、人材育成や適材適所につなげる。
そこまでできているかという視点で、人事評価制度を点検していく必要があると考えます。
以上、道庁の人事評価は本当に機能しているのかについて検証いたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和8(2026)年1月11日
※この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。
参考資料:北海道「令和6年度 北海道の人事行政運営状況」


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