追記(2026年9月)
本記事は、北海道庁で働いた経験をもとに、公務員について外部から語られがちなイメージと、実際に働いて感じたことの違いを整理したものです。実名での発信へ移行するにあたり、特定の職員や世代を一括りにする表現、他業種を不必要に下げる表現を改めました。公務員を擁護するためでも、批判するためでもなく、進路や転職を考える際の判断材料として読んでいただくことを意図しています。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
「公務員は楽」は半分本当、半分誤解
公務員について語られる言葉は、どうしても極端になりがちです。
「楽でいい」「安定していて羨ましい」「役所は何も考えていない」。私も在職中から、こうした言葉を何度も耳にしました。
元職員として言えば、その中には一面の真実もあります。しかし、それだけで公務員という仕事全体を説明することはできません。
まず、「公務員は楽」という見方です。
確かに、比較的業務量が安定していて、定時で帰りやすい部署もあります。繁忙期と閑散期がはっきりしている仕事もあります。
一方で、部署によって忙しさは大きく異なります。議会、予算、災害対応、制度改正などが重なれば、短期間に業務負荷が一気に高まることもあります。
また、行政には「利益を出さなくてよい代わりに、正確に処理し、法令や制度に沿って説明できること」が強く求められます。
一つのミスが、議会や監査、住民への説明につながる場合もあります。民間とは違う種類の緊張感がある仕事です。
私自身も含め、心身の調子を崩す職員を身近で見ることがありました。
雇用が安定していることと、日々の仕事が楽であることは、まったく別の話だと思います。
「何も考えていない」のではなく、考えても決められないことがある
「役所の人は何も考えていない」という批判もよくあります。
私が内部で感じたのは、むしろ「考えてはいるが、自分だけでは決められない」という場面の多さでした。
行政では、担当者が良いと思った案でも、法令、予算、権限、過去の取扱い、関係部署との調整などを確認しなければ実行できません。
制度上可能なのか。財源はあるのか。ほかの住民との公平性はどうか。別の部署や自治体との役割分担はどうか。
こうした条件を一つずつ確認していくうちに、当初のアイデアがそのまま実現できないことは珍しくありません。
この経験を重ねると、「まず何ができないか」を先に考える癖が身につくことがあります。
外から見れば、前例どおりに動き、何も考えていないように見えるかもしれません。
しかし実際には、考えた末に「今の制度ではここまでしかできない」と判断している場合もあります。
もちろん、それを理由に思考を止めてよいわけではありません。制約を理解することと、改善を諦めることは別です。
ただ、「考えればすぐ変えられる仕事」ではないことは、公務員の仕事を見るうえで知っておいてよいと思います。
「安定」と「幸せ」は同義ではない
「公務員は安定している」。これは、一面では間違いではありません。
景気によって急に雇用を失う可能性は比較的低く、給与制度も一定の見通しを持ちやすい。これは大きな利点です。
私自身も、公務員という仕事が持つ安定性そのものを否定するつもりはありません。
ただし、雇用の安定と、キャリアや精神面の安定は同じではありません。
異動によって担当分野も人間関係も大きく変わります。数年かけて覚えた仕事から離れ、まったく違う分野を担当することもあります。
専門性を継続して積み上げたい人にとっては、その人事運用が合わない場合もあります。
また、安定した組織に長くいるほど、「外に出たら自分は通用しないのではないか」と不安になる人もいます。
私自身、道庁を辞める前には、行政職として積んだ経験が民間企業でどこまで評価されるのか不安がありました。
実際に転職してみると、行政で身につけた文章作成、関係者調整、予算感覚、期限管理といった経験が役に立つ場面もありました。
安定には価値があります。しかし、「安定しているから自分に合う」とは限りません。自分が何を大切にするかによって、同じ環境の意味は変わります。
なぜ誤解は埋まらないのか
では、なぜ公務員をめぐる極端なイメージはなかなか消えないのでしょうか。
一つには、行政の仕事が外から見えにくいことがあります。
住民から見えるのは窓口、電話応対、制度の結果などが中心で、その裏側にある法令確認、決裁、予算、庁内調整、国や市町村との協議までは見えません。
一方、行政側も、自分たちの仕事や制約を外に説明することが得意とは言えない場面があります。
職員側に「説明しても分かってもらえない」と距離を取る感覚が生まれれば、市民との間はさらに離れます。
しかし、市民からすれば、説明されなければ内部事情など知りようがありません。
ここで必要なのは、「市民が行政を知らないから悪い」と考えることでも、「行政がすべて悪い」と考えることでもないと思います。
両者の間に、制度や仕事の実態を分かりやすく翻訳する情報が足りない。私は、そこに大きな問題があると感じています。
それでも私が元職員として書く理由
私がこのブログで道庁時代のことを書き続ける理由は、誰かの判断材料になればよいと思っているからです。
道庁を攻撃したいわけでも、公務員を擁護したいわけでもありません。
実際、道庁で嫌だったこともありますし、今振り返れば学んだことや、仕事に生きている経験もあります。
また、道庁を辞めて民間企業でも働いたことで、公務員だけが特別に優れているとも、民間だけが合理的だとも思わなくなりました。
組織が違えば、それぞれ別の非効率や理不尽があります。
私自身、行政職というキャリアが民間でどこまで評価されるのか不安を持っていました。特定の資格や技術職のように、分かりやすい専門性を示しにくいと感じていたからです。
それでも実際には転職することができましたし、行政で経験した仕事を別の環境で生かすこともできました。
公務員になるかどうか。公務員を続けるかどうか。辞めるかどうか。答えは人によって違います。
だからこそ、世間の「楽そう」「安定しているから勝ち」「公務員は何も考えていない」といったイメージだけで決めてほしくありません。
これから公務員を目指す人にも、辞めるか迷っている人にも、行政を外から見る人にも、できるだけ誤解ではなく、事実と自分自身の価値観を材料に判断してほしい。
私が元職員として書き残したいのは、結局のところその一点です。
以上、元職員として今だから言える「これは誤解です」について雑感を申し上げました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
2026年1月24日
※この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。





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