追記(2026年9月)
本記事は2025年12月17日に、北海道庁勤務時代の庁内メール文化を振り返って執筆したものです。実名での発信へ移行するにあたり、当時の問題意識とブログのユーモアを残しつつ、職員個人の意図を断定する表現を整理し、情報共有・業務効率化・行政DXという観点から内容を修正しています。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
庁内メールはなぜ増えるのか
これは北海道庁に限らず、大きな組織では珍しくない話かもしれません。
私が道庁で働いていた頃、庁内メールは単なる連絡手段というより、組織を動かすための重要なインフラでした。
一方で、必要な情報を確実に共有しようとするほど、メールの量が増え、結果として本当に重要な連絡が埋もれやすくなるという矛盾も感じていました。
行政では、後から「聞いていない」「知らなかった」という状態を避ける必要があります。
そのため、関係しそうな人には念のため共有する、管理職にもCCを入れる、紙で回覧していてもメールでも知らせる、といった運用になりやすいのだと思います。
一件一件を見れば、どれも合理的です。
しかし、それが組織全体で積み重なると、受信箱は「念のため」の情報で埋まっていきます。
以前、庁舎の掲示物について「情報を出したことと、情報が伝わったことは同じではない」と書きました。
庁内メールにも、よく似た問題がありました。
CCと丁寧な文章が生むコミュニケーションコスト
庁内メールで印象に残っているのが、CCの多さです。
関係部署や管理職を幅広く入れておくことで、情報共有の漏れを防げます。
ただ、誰まで入れるべきなのかを毎回考えることになり、若手の頃は宛先の並べ方まで気にする場面があることに驚いた記憶があります。
本来の目的は情報共有ですが、形式面への配慮も積み重なると、それ自体が小さなコミュニケーションコストになります。
本文も同様です。
行政文書では、誤解を避けるため慎重な表現が求められます。
その習慣がメールにも持ち込まれ、簡単な連絡であっても、
「標記の件につきまして」「ご確認のほどよろしくお願いいたします」といった定型句が重なり、肝心の要点が見えにくくなることがありました。
丁寧であることは大切です。
しかし、丁寧さと分かりやすさは同じではありません。
読む側からすれば、メールを開いた瞬間に「自分は何をすればよいのか」「期限はいつか」「単なる参考共有なのか」が分かる方が、はるかに助かります。
「送った」と「伝わった」は違う
庁内メール文化で最も気になっていたのは、送信した時点で仕事が一区切りしたように見えやすいことでした。
周知メールを送る。
照会メールを出す。
関係者へ一斉共有する。
これらは必要な業務です。
ただ、メールを送ったことと、相手が内容を理解し、必要な行動を取ったことは同じではありません。
政策評価の言葉を借りるなら、「送信した」という事実はアウトプットです。
一方で、「読まれた」「理解された」「期限までに対応された」という状態はアウトカムです。
前者は確認しやすい一方、後者は確認しにくい。
そのため、どうしても「送信済み」という事実の方が管理しやすくなります。
しかし、情報共有の目的は送信ボタンを押すことではありません。
必要な人が、必要な情報を理解し、必要な行動を取れる状態をつくることです。
便利なメールだからこそ、何でもメールになる
メールは便利です。
記録が残り、複数人へ同時に送れ、離れた部署にも瞬時に共有できます。
だからこそ、何でもメールで送るようになりやすい面があります。
私が勤務していた頃には、紙で回覧される文書について、別途「回覧していますので確認してください」とメールが来ることもありました。
場合によっては、さらに口頭でも周知されます。
紙、メール、口頭の三重連絡です。
念を入れるという意味では確実ですが、同じ情報を複数の経路で追いかけることにもなります。
これは行政DXにも通じる話です。
紙の手続をそのまま残したまま、同じ内容をメールやシステムでも扱えば、デジタル化によって仕事が減るどころか、二重・三重の作業が生まれます。
新しいツールを導入するだけではなく、「この連絡は本当に複数経路が必要なのか」「この情報は全員へ送る必要があるのか」と工程そのものを見直す必要があります。
良い庁内連絡とは何か
では、庁内メールを減らせばよいのでしょうか。
私は、単純に件数だけを減らすことが答えではないと思います。
重要なのは、送る前に情報の性質を整理することです。
誰に必要な情報なのか。
要対応なのか、参考共有なのか。
相手に何をしてほしいのか。
期限はいつなのか。
メール以外の手段の方が適切ではないのか。
この点が分かれば、受け手側の負担はかなり減ります。
また、件名だけでも「周知」「照会」「回答依頼」などの性質が分かるようにすることには意味があります。
ちなみに、本ブログで「【通知】」「【照会】」などの件名を使っているのは、私が道庁時代に日常的に目にしていた庁内メールの件名をオマージュしたものです。
SEO的に優れているかは分かりませんが、実名で発信するようになった今も、この名残はブログの個性として残していきたいと思っています。
メールは便利だからこそ、増えやすい。
だからこそ、情報共有の目的を「送ること」ではなく「伝わること」に置き直す必要があります。
情報共有の目的は、送信ボタンを押すことではありません。
必要な人が、必要な情報を理解し、必要な行動を取れる状態をつくることです。
以上、庁内メール文化の不思議な作法についてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和7(2025)年12月17日
※この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。





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