【観察記録】公務員の昼休みの沈黙につきまして

北海道庁

関係者各位

いつも大変お世話になっております。

元道庁職員鈴木邪道でございます。

標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。

昼休みという名の「沈黙の儀式」

北海道庁で働いていた数年間、私がずっと違和感を覚えていた光景があります。

それが“昼休みの異様な静けさ”です。

大学の昼休みのように笑い声が響くわけでもなく、

民間企業のリラックススペースのように気軽な雑談が飛び交うわけでもない。

そこにあるのは、“みんな机へ向かい、無言でスマホを覗き込む集団”という、ある種の宗教儀式のような光景です。

私は入庁したての頃、「もしかして仲が悪いのかな?」と本気で考えました。だってみんなマジで一言も喋らないし…。

しかし、数か月経つと分かったのは、仲が悪いわけではなく、そもそも “相手に興味がない” のだということです。

あるいは、興味を持つ余裕がないと言うべきでしょうか。

<strong>亀ナレフ</strong>
亀ナレフ

敵ではない!だが味方でもないッ!

社会人の“適切な距離感”と言えば聞こえはいいですが、私にはむしろ“お互いの存在を薄め合うような空気”に見えました。

弁当とセイコーマートが支える道庁の昼

道庁の昼休みの主役は“デスク弁当”です。外食など、月に一度あるかどうか。
本庁地下一階には食堂もありますが、私のようなお給料が高くない若年職員や家計管理に神経を使わなければいけない子育て世代の上司たちは毎日通うほど気軽ではありません。

私自身も、多くの職員と同じく、セイコーマートの惣菜+インスタント味噌汁+白米という北海道庁スタンダードセットを毎日のように食べていました。

管理職は新聞を広げ、 係長以下はスマホ片手に黙々と食べる。
時折、どこかの机で「ズズッ」と味噌汁をすする音が響き、 その音が逆に静寂を強調するほどです。

この静けさは、休憩というより “公僕という機械たちの稼働停止時間”と呼んだ方がしっくりくるほどでした。

「喋ると全員が聞く」空気の恐怖

静かなだけならまだしも、この沈黙には妙な緊張感が混ざっています。 誰かが少しでも喋ると、周りが微妙に耳をそばだてるのです。

「昨日のニュースさ…」と話し始めた瞬間、 明らかに周囲の目線と耳がそちらに向く。

この“監視されている感じ”を知ると、 どんな性格の人間でも自然と口を閉ざすようになります。

こうして静かだから喋らない → みんな喋らないからもっと静かになる→喋る奴は異端・場の空気を乱すとみなされる→だから喋らないという沈黙のスパイラルが定着していきます。
私自身、2年目くらいには完全にその流れに飲み込まれていました。

実際、話題にできるのは天気と昼飯くらい。「昨日のニュース見た?」と口にすれば、隣の席どころか部屋の端の人まで聞いている。

まして予算や議会関係の内緒話なんて絶対NG。昼休み明けには部内全域に知れ渡っています。

そういう空気を知ってから、みんな口を閉ざすようになった。

“静寂の連鎖”です。

生保レディと議会対応―昼休みを破壊する2大勢力―

この沈黙を問答無用で切り裂いてくる存在が、二つあります。

生保レディ

彼女たちは、職員証もないのに堂々と執務室に入ってきます。

昼休みの最初の10分は、“誰が今日の獲物になるのか”という恐怖の時間です。

机に星座占いやクイズの紙を置いていくのは序の口。

新人が見つかれば「○○さん、ちょっとだけ」と甘い声でロックオン。

あの“ちょっとだけ”ほど信用ならない言葉はありません。

私は彼女たちを避けるため、狸寝入りという高度な戦術を使っていました(意外と効果があります)。

議会対応

議会が開会している期間は、昼休みという概念が存在しません。

電話は鳴りっぱなし、議員からの照会も止まらない。電話していたらとても時間が足りないので隣の部屋宛でもFAXを流したり、走って伝えに行く…

職員はおにぎりを丸飲みしながら回答し、食べ終えた頃には休憩終了。お昼ご飯を食べる時間すらない時なんてのもザラです。

ここで私が強く感じていたのは、“昼休みがズレるならまだしも、奪われた時間は誰も返してくれない”という理不尽です。

狸寝入りの昼休み戦略

私は1年目の途中から、昼休みはほぼ毎日狸寝入りをしていました。

というのも、

  • 生保レディに捕まりたくない
  • 誰にも話しかけてほしくない
  • 少しでも頭と心を休めたい

という思いがあったからです。

周りを見ても、話しかけるなオーラを出すために目を閉じる人は多かったと思います。

そうでもしなければ精神がもたなかったのです。

“働き方改革”の盲点―休めない昼休み―

労働基準上、昼休みは“45分の休憩”として確保されているはずですが、私の経験では、実際の休憩時間は30分以下の日もありました。特に議会中は悲惨です。

それでも誰も文句を言わず、「まあ、公務員だからね」と自分を納得させながら働き続ける。

果たして、これが安定と言えるのだろうか?

私はずっと疑問でした。

沈黙は優しさか、諦めか

今振り返って思うのは、あの昼休みの静寂は、誰かを拒絶していたわけではなく、互いに干渉しないことで自分を守る、“小さな休戦時間”だったのだろうということです。

ただその沈黙は、同時に組織の停滞と無関心の象徴でもあります。

誰も悪くない。
でも、この静けさが積み重なった結果が、今の北海道庁の重たく湿った空気を作っている。
私はそう感じています。

以上、公務員の昼休みの沈黙についてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。

令和7(2025)年11月20日

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北海道庁生存戦略部
異端企画局
内部是正推進課非公式記録整理係
主事 鈴木邪道
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