関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の鈴木邪道でございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
狂気の中にも「例外」はいた
このブログではこれまで、北海道庁という組織の異常さや、そこで日常化していた狂気の風景を記録してきました。
腐敗、責任逃れ、無関心…
そうした言葉でしか表現できない現場の実態を書いてきましたが、あの場所に“尊敬できる職員”が一人もいなかったわけではありません。
むしろ、あの閉じた空気の中だからこそ、「まともな人間」の存在は際立って見えました。
周囲の多くが、理不尽を理不尽と思わなくなっていく中で、それでも人間らしさを失わず、誠実さを貫いた人たちも決して多いとは言えませんが、ちゃんといました。
今日は、そんな数少ない“例外”、私が本当に尊敬できた上司および同僚について、記録として残しておきたいと思います。
信金出身の年上の同僚
彼は、同じ年に採用された“同期”でしたが、年齢は私より上で、専門学校を出た後に道北のとある信用金庫に10年ほど勤めた中途転職組(C区分採用)でした。
最初に会ったときの印象は、正直「地味な人」でした。派手さはないし、(失礼ながら)老け顔で、4月1日に初めて会ったときは上司かと思いました(笑)。
しかし、一緒に仕事をしていくうちに彼の「誠実さ」は、周囲の誰よりも“実行を伴う誠実さ”だと分かりました。
彼は上司や周囲に必要以上に媚びず、かといって一匹狼だとか反抗的なわけでもありませんでした。
いつでも冷静で、「やるべきことをやる」という一点だけを軸に、黙々と仕事を進めていました。流石金融機関出身だなと思ったのが、飲みニケーションが得意だったこと。でも、お酒の場で上司に気に入られようと媚びを売ったりするようなことは決してしませんでした。
何か困ったことがあっても、「それ俺やっておくよ」と、当然のようにフォローしてくれる。見返りも見せびらかしも一切なし。民間出身の人間特有の“現実感覚”を持ちながら、優しさも兼ね備えた人でした。
会話の節々に、「こういうの、民間なら絶対ありえないよね」と言いながらも、どこかに“変えよう”という意志も滲んでいました。
正直、道庁という組織は、年次や肩書きでマウントを取る人間が多いです。
しかし彼は、年下の私にも敬語で話し、意見を聞き、冗談を言い合える関係を築いてくれました。
函館に野郎2人で2泊3日のドライブ旅行もしました。今思うと、10歳差独身おっさん2人の男ドライブ旅というすさまじくカオスな組み合わせでしたが(笑)。
ああいう職員がもっと多ければ、私は辞めていなかったかもしれないです。
2年目◇◇係の先輩
2年目、◇◇係に配属されたとき、そこは地獄のような部署でした。
年度末には、机の上に書類が積み上がり、夜中の0時を過ぎても電気が消えない。
「これが道庁の花形部署だ」と言われながら、実際には“人をすり潰す現場”にすぎなかった。
そんな環境で、唯一まともだったのが、その先輩でした。見た目はマッチョで体育会系という風貌でしたが、声は穏やか、何よりも“芯の強さ”がありました。
彼は怒らない。ミスをしても、冷静に「ここ直そう」「次はこうやってみよう」と言ってくれました。
“怒る”と“教える”の違いを、彼ほど明確に分かって且つ一貫している人を、私は後にも先にも他に知りません。
一度、私が致命的なミスをした夜がありました。心臓が止まりそうなほど焦っていたとき、彼は黙ってコーヒーを差し出してこう言いました。
「焦るな、邪道くん。こういうときこそ、落ち着いたやつが勝つんだよ。」
その一言で、私は肩の力が抜けました。怒鳴らず、諭さず、ただ“人として支える”。
◇◇係という戦場で、彼の存在はまるで私にとってオアシスでした。
彼の存在があったからこそ、社会人としての今の私がある。そんな風に思います。
3年目の係長と課長補佐
3年目の春、私はメンタルの限界を迎えていました。
あるひ、布団から出ようにも体が動かず、朝の出勤が出来なくなりました。
そんな状況を真正面から受け止め、私を“人間として扱ってくれた”のが、当時の係長と課長補佐でした。彼らは慰めの言葉をかけたわけでも、説教をしたわけでもありません。
ただ、「今できる範囲でやろう」「困ったらすぐ言え」とだけ言ってくれました。
ある意味、私がこの係で既に1年経験しており、雑多な業務の全貌を把握できていたからかもしれませんが、マイクロマネジメントも一切なし。そのおかげで、自信を取り戻すことが出来ました。
道庁の問題は、個人ではなく“空気”だ
北海道庁という組織を語るとき、どうしても「誰が悪いのか」「どの上司がひどかったのか」という“個人”の話になりがちです。
けれど、あの職場で本当に恐ろしかったのは、“人ではなく“空気”でした。
その空気は、直接誰かが作るわけではない。誰も悪気はないのに、誰も疑問を持たないまま、理不尽が当たり前になっていく。そして、それに抗おうとする人ほど「空気が読めない」と排除されていく。
僕が尊敬した人たちは、その空気の中でも流されず、“人としての筋”を通していた人たちでした。彼らのような存在が、道庁という組織のわずかな良心であり、希望でもあったと思います。
だからこそ、私は思うのです。
組織を変えるのは、制度や会議、そして知事や議員でもない。「空気に負けない人間」が一人でも増えることだと。
もしこの記事を現役の職員が読んでいるなら、どうか思い出してほしい。あの空気の中でも、確かに“まともな人間”は存在していた。そして、あなたもそうなれる。
北海道庁の問題は、人ではなく空気。けれど、空気を変えるのも人なのです。
以上、道庁時代に尊敬できた上司および同僚たちについてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和7(2025)年11月9日
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北海道庁生存戦略部
異端企画局
内部是正推進課非公式記録整理係
主事 鈴木邪道
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