関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の振興局太郎でございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
2027年の定数見直しは「最低限」で終わった
2027年春の北海道議会議員選挙を前に、道議会の選挙区と定数が見直されました。

今回の改正では、人口が選挙区を維持できる水準を下回った根室市を根室管内に、名寄市を上川管内にそれぞれ合区します。一方で、北海道議会全体の定数100は維持されます。
必要な修正ではあるのでしょう。しかし、これで問題が解決したわけではありません。
札幌市中央区と宗谷管内の「1票の格差」は3.342倍。さらに、人口の少ない選挙区の方が議員定数が多い“逆転現象”も30通り残ります。道議会自身も、2031年の道議選に向けて、引き続き定数制度を検討するとしています。
つまり今回の改正は、道議会の選挙制度そのものを作り直したというより、2027年選挙を現行制度の延長線上で実施するための最低限の手直しだった、と見るのが適切でしょう。
実際、7月時点の報道でも、定数100の維持を前提に議論が進められ、各党や現職議員の利害から大きな変更には踏み込みにくい事情が指摘されていました。

そうであるならば、次に考えるべきことは単純です。
2031年に向けて、何を基準に制度を作り直すのでしょうか。
道議会は「人口」を代表するのか、「地域」を代表するのか
現在、札幌市内には10の道議選挙区があり、定数は合計28です。
ところが、人口だけを基準に2023年道議選の定数を割り振った場合、札幌市内は38議席になる計算でした。実際には札幌を28議席に抑え、残る10議席分を地方部へ配分しています。
これは一見すると、「札幌市民の1票が軽く扱われている」という話になります。
確かに、人口比例という原則だけで考えるなら、その通りです。しかし、私は北海道議会を単純な人口比例だけで構成すればよいとも思いません。
北海道は非常に広い(当たり前)。
宗谷、根室、檜山、日高など、人口の少ない地域にも、それぞれ異なる産業、交通、医療、防災、教育の課題があります。人口だけで機械的に議席を割り振れば、道議会が札幌をはじめとする都市部中心の議会になり、人口の少ない地域の事情が政治的に見えにくくなる可能性があります。
そのため、地方の声を一定程度厚く代表する(定数を意図的に増やす乃至は維持する)こと自体には、合理性があります。問題は、その度合いです。
「地方の声を守る」という一言だけで、一票の格差や逆転現象をどこまでも正当化できるわけではありません。
- 北海道議会は人口を代表する議会なのか
- それとも地域を代表する議会なのか
おそらく答えは「両方」なのでしょう。
であるならば、人口平等をどこまで基本とし、どこから地域代表を優先するのか。その考え方を明示する必要があります。
今の制度には、そこが見えにくいと感じます。
では、札幌選出道議は何を代表しているのか
そして、私がこの問題で最も気になるのが、札幌選出の道議会議員の存在意義です。
誤解のないように書けば、札幌選出道議が不要だと言いたいわけではありません。
しかし、札幌市は政令指定都市です。
市長がいて、市議会があり、福祉、都市計画、道路、教育、まちづくりなど、市民生活に密接する多くの行政分野を自ら担っています。北海道庁と他市町村との関係とは根本的にルールが違うのです。
実際、北海道新聞の記事でも、政令指定都市である札幌市は道に近い権限を持つため、道議の定数を少なくしてもよいという考え方が紹介されています。
そこで疑問が生じます。
札幌選出の道議は、札幌市議とは異なる何を代表しているのでしょうか。
例えば北区の道路、公園、除雪、地域施設といった身近な市政課題については、本来、札幌市議会が中心になって議論するものです。道議会議員までが「○○区の細かな要望を道庁につなぐ人」になるだけなら、市議会との役割分担は分かりにくくなります。
私が札幌選出道議に期待するなら、むしろ逆です。
- 札幌と道内地方をどう結ぶのか
- 札幌市北区と石狩市や当別町といった隣接自治体、江別市や月形町といった中規模圏域とどう連携していくのか
- 医療、産業、交通、観光、防災といった広域課題をどう考えるのか
- 北海道の中で札幌という巨大都市をどう位置付けるのか
そうした視点こそ、道議会で議論されるべきではないでしょうか。
札幌選出道議を「札幌市議の上位版」「同会派札幌市議のパートナー」のように考えるのではなく、北海道全体の中で札幌を代表する政治家として位置付け直す必要があるように思います。
札幌2選挙区案は何を変えるのか
そこで興味深いのが、共産党が示した札幌市内の選挙区再編案です。

現在の10選挙区を大きく2つに再編し、例えば中央・白石・厚別・豊平・清田・南を定数15、北・東・西・手稲を定数13とする案などが検討されています。
総定数28は変えず、一票の格差を3倍未満に抑えることができるほか、少数政党にも議席獲得の可能性が広がり、死票が減ることも期待されています。
私は、この案を「共産党案だし…」という理由だけで評価するのはもったいないと思います。面白いのは、選挙区を大きくすると、札幌選出道議の性格そのものが変わる可能性があることです。
現在の制度では、「北区選出」「中央区選出」といった地域代表としての色彩が強くなります。
しかし、北・東・西・手稲の4区から13人を選ぶ巨大選挙区になれば、候補者にはより広域的な政策や政治的立場が求められるでしょう。
一方で、大選挙区化には欠点もあります。選挙区が広くなれば候補者と地域との距離は遠くなります。選挙費用や知名度の重要性も増すでしょう。政党単位での選挙になり、北区や手稲区といった地域ごとの課題が埋もれる可能性もあります。
ですから、札幌2選挙区化が必ず正解だとは思いません。議席数も現行の28議席を維持すべきだとも思いません。
ただし、少なくともこの案には、
「そもそも札幌の道議に、区単位の地域代表性をどこまで求めるのか」
という問いを突きつける力があります。 それだけでも、検討する価値は十分にあると思います。
2031年に問われるのは「定数」ではなく「道議会の設計思想」
2027年の道議選については、制度の大枠を維持したまま実施されることになりました。選挙までの時間を考えれば、今回、大規模な制度変更を見送ったこと自体は理解できます。
しかし、2031年まで同じ議論を繰り返すのであれば話は別です。
- 札幌を何議席にするか
- どこの選挙区を合区するか
- 定数100を維持するか
もちろん、それらも重要です。しかし、その前に決めるべきことがあります。
- 北海道議会は何を代表する議会なのか
- 人口をどこまで重視するのか
- 地方の地域代表をどこまで保障するのか
- 政令指定都市・札幌の道議には何を担わせるのか
そして、多様な政治的意見をどのように議席へ反映するのか。
この設計思想がないまま定数だけを動かしても、結局は各党と現職議員の議席調整になってしまいます。
私は札幌で暮らし、一度は道庁職員として行政の仕事を経験し、その後も地域活動やまちづくりに関わる中で、「誰がどの行政課題に責任を持つのか」は非常に重要だと感じるようになりました。
- 道庁がやること、市役所がやること
- 道議が議論すべきこと、市議が議論すべきこと
そこが曖昧なままでは、有権者にとって政治は分かりにくいままです。
そして私自身、これから札幌の地域政治について、外から感想を述べるだけではなく、もう少し当事者意識を持って考えていきたいと思っています。
札幌を2選挙区にしただけで、北海道議会が劇的に変わるとは思いません。しかし、この議論をきっかけに、
なぜ札幌には28人の道議がいるのか
なぜ人口の少ない地域には、人口比のルールを飛び越えて一定の議席を残すのか
その理由を道民に説明できる制度へ変わるのであれば、十分に意味のある改革だと思います。
2031年に必要なのは、議席の足し算と引き算ではありません。北海道議会そのものを、何のために存在する議会として設計するのか。そこから議論を始めるべきではないでしょうか。
以上、札幌を2選挙区にしたら道議会は変わるのかについてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和8年9月14日
北海道庁生存戦略部
異端企画局
内部是正推進課非公式記録整理係
主事 振興局太郎
この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・地方政治のあり方について考える一つの材料となれば幸いです。

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