【通知】「公務員は安定している」という言葉が如何に虚ろかにつきまして

北海道庁

関係者各位

いつも大変お世話になっております。
元道庁職員鈴木邪道でございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。

「安定している」という言葉の空虚さ

学生時代から「公務員は安定していていいな」と言われるたびに、私はどこか腑に落ちませんでした。
確かに、公務員は倒産せず、給料も急にゼロにはなりません。
しかし、現実の社会を見ても、失業者が街にあふれかえっているわけでもなく、倒産ラッシュが常に起きているわけでもありません。
なのに、なぜ“安定”という言葉だけがここまで神格化されるのか。
確かに、公務員は簡単にはクビになりません。むしろ不祥事の罰が驚くほど軽い場合すらあります
しかし、守られているのは「命」ではなく、「思考停止」だと感じました。
安定の代償として失われているのは、リスクを取る力、好奇心、そして自分の人生を自分で選ぶ自由そのものです。
“安定”を手に入れた人々が幸せそうに見えたことは、私には一度もありませんでした。
「安定している」という言葉は、実際には“変化を恐れて動けなくなった状態”を指しているのだと、私は入庁して初めて理解しました。。
日々の業務の中で感じるのは安定ではなく“停滞”。守られているのは生活ではなく「惰性」なのです。
それでも皆、今日も机に向かい、同じ言葉を繰り返します。
「なんだかんだ公務員は安定してるからさ」
それはまるで、職員全員で唱える呪文のようでした。

「安定」とは自己暗示である

職員たちが口にする「公務員はなんだかんだ安定してるからさ」という言葉。
あれは、現実を直視しないための“呪文”に近いものです。
手取りは20代後半で20万円そこそこ。
人事の一声で、明日から地獄の部署に異動になるかもしれない。
それでも「民間よりマシ」と言い聞かせて、今日も机にしがみつく。
公務員が信仰しているのは「安定」ではありません。不安と戦う勇気を失った自分への、強力な自己暗示なのです。
この自己暗示は恐ろしいほどに強力です。これは、高卒公務員の記事でも紹介しました。

上司がパワハラをしても「どこに行っても同じだ」と自分を納得させる。
仕事がどれだけ増えても、給料が上がらなくても「民間よりマシ」と自らを騙す。
それを10年、20年と続けるうちに、人は“何も感じない人間”に仕上がっていきます。
公務員が信じている「安定」とは、外敵からの防御ではなく、内側の腐敗を正当化するための装備なのかもしれません。

変化への拒絶

3年目のある日、私は執務室のレイアウトを少し変えようと提案しました。
書類の山で動かせなくなった移動書架、保存期限が切れた紙の墓場。
折しもDX化の流れもあり、古い書類を整理して動線を改善しようと考えたのです。
説明の際、私はこう言いました。

鈴木邪道
鈴木邪道

皆さんの不便にはなりません。

すると、隣の先輩がぼそっと言いました。

先輩
先輩

じゃあ、変えなくてよくない?

その瞬間、頭の中で何かが“カチッ”と音を立てて外れた気がしました。
なるほど、この組織は「困っていない限り、何も変えない」のだと。
“変える必要がない”のではなく、“変えたくない”のです。
変化は「損失」とみなされ、改善は「余計な仕事」として処理される。こうして、誰も悪気なく、組織は静かに腐敗していきます。
安定とは、死なないことではなく、ゆっくりと朽ちていくことなのだと痛感しました。

「安定」の裏で、壊れていく人たち

皮肉なことですが、「安定している」と言われる公務員には、メンタルを壊す人が多いです。
私もその一人でした。
そのとき痛感したのは、公務員の多くが「安定」という呪縛に囚われているということでした。
壊れそうになっても、転職を考えることすら“裏切り”と感じてしまう。
休職制度を使うことさえ、“甘え”だと自分を責める。
もはやドMではなく、自己破壊の宗教のようです。
働くことが苦役なのは仕方ありません。しかし、公務員は“生命の危険から逃げる”という自由さえ放棄している人が少なくありません。
“安定教”という名の生ぬるい地獄の中で、ただ消耗していく人たちを、私は何人も見てきました。
さらに、公務員独特の“異動文化”も拍車をかけます。
せっかく穏やかな部署に慣れたと思えば、次の春には激務部署に飛ばされる。
しかもそれは、異動の3週間前まで分からない。
安定と言いながら、精神の安定が最も保証されていないのが、この世界の実態なのです。

「安定」とは、変化の放棄である

「安定」と「停滞」を混同している人が、あまりに多いと感じます。
本来、安定とは努力の上に成り立つ“持続”です。
しかし、現実には、努力をやめるための思考停止の言い訳として“安定”が使われています
安定を守るために挑戦をやめ、現状を維持するために思考を止める。
その結果、維持どころか静かに衰退していることにすら気づきません。
「変わらないこと」を目的にした瞬間、その組織は終わります。
そして、変わらないことに慣れた人間は、自分の中で静かに腐っていきます。
結局のところ、“安定を選んでも、不安からは逃げられない”
むしろその安定は、不安を永遠に先送りするだけの“装置”です。
人が本当に求めているのは、変わらない環境ではありません。安心して変われる環境です。
そして公務員の世界では、その環境を自ら潰してしまうことがあまりに多いように感じます。

以上、「公務員は安定している」という言葉が、いかに虚ろかについてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。

令和7(2025)年11月30日

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北海道庁生存戦略部
異端企画局
内部是正推進課非公式記録整理係
主事 鈴木邪道
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