関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の振興局太郎でございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
秋元市長が4選不出馬の意向
札幌市の秋元克広市長が、2027年春に予定されている札幌市長選挙に出馬しない意向であることが報じられました。

秋元市長は2015年に初当選し、2019年に再選、2023年に三選を果たしました。
現在は3期目であり、2027年春まで任期を務めれば、3期12年にわたり札幌市政を担ったことになります。
秋元市長の経歴を振り返ると、いわゆる「外から来た改革者」というよりも、札幌市役所の内部を知り尽くした行政型の市長であったことが分かります。
札幌市役所に入庁後、企画調整局情報化推進部長、市民まちづくり局企画部長、南区長、市長政策室長などを歴任し、2012年には副市長に就任。その後、2015年の市長選挙で初当選しました。
つまり、秋元市政とは、札幌市役所という組織の中で長く行政実務を経験してきた人物による市政運営だったと言えます。
もちろん、秋元市政に対しては様々な評価があります。
- 冬季オリンピック・パラリンピック招致の断念
- 北海道日本ハムファイターズの札幌ドーム撤退
- 敬老パスの見直し
- 都心再開発と郊外部の温度差
こうした個別の政策や出来事については、批判的に見られる場面も少なくありません。
ただ、今回の記事では、後継候補が誰になるのか、どの政党が誰を支援するのか、といった政局そのものを主題にするつもりはありません。
私が整理したいのは、秋元市政12年の成果と課題を踏まえたうえで、次の札幌市長に何が引き継がれるのかという点です。
元道庁職員として行政組織を見てきた立場からすれば、秋元市政は、派手な政治ドラマだけで評価するよりも、行政運営の継続性の中で見るべき市政だったように思います。
札幌はこの12年間で、人口が増え続ける大都市から、人口減少、財政制約、人手不足、公共施設更新、雪対策といった課題に本格的に向き合わざるを得ない都市へと移りつつあります。
その意味で、秋元市長の4選不出馬は、単なる一人の市長の退任では片付けられず、札幌市政が次の段階へ移る節目でもあります。
そこで今回は、秋元市政12年を振り返りながら、次期札幌市長への申し送り事項について整理してみたいと思います。
秋元市政12年はどんな時代だったのか
では、秋元市政の12年とは、札幌にとってどのような時代だったのでしょうか。
一言で言えば、
「成長する札幌」から「維持しながら選択する札幌」へ移り変わる時代だったように思います。
秋元市長が初当選した2015年頃の札幌は、まだ成長都市として振る舞うことができる時代でした。
インバウンド観光は拡大し、外国人観光客が市内中心部を歩く光景も珍しいものではなくなっていきました。
さっぽろオータムフェストのような食のイベントも、札幌市民だけでなく、道内外・国外から人を呼び込む観光資源として存在感を増していきました。


私自身も、オータムフェストの拡充は印象に残っています。当時は私は大学生でした。最初はちょっと豪華な学校祭くらいの規模と期間だったオータムフェストも年を追うごとに豪華に、そして開催期間も充実してきました。
大通公園に道内各地の食が集まり、札幌市民が北海道全体の魅力に触れる。観光客もそこに集まる。
これは、札幌が北海道の玄関口であり、同時に道内各地域のショーケースでもあることを分かりやすく示すイベントだったと思います。
また、都心再開発も進みました。
札幌駅周辺、大通周辺、北海道新幹線札幌延伸を見据えた再整備、都心アクセス道路をめぐる議論など、札幌の都心部はこの12年で大きく変わってきました。


札幌が北海道の中心都市として、国内外から人・企業・投資を呼び込むためには、都心機能の強化は避けて通れません。
その意味で、秋元市政の前半は、観光、再開発、イベント、インバウンドといった言葉が似合う時代だったように思います。
しかし、その後半になると、状況は大きく変わります。
まず、新型コロナウイルス感染症の流行です。
観光、飲食、イベント、交通、宿泊など、札幌の都市経済を支えてきた分野は大きな影響を受けました。

コロナ禍は、単に一時的な危機だっただけではありません。
札幌という都市が、どれほど人の移動、観光、イベント、消費に支えられていたのかを可視化した出来事でもありました。
さらに、人口減少局面への移行も大きな転換点です。
札幌市は、長らく北海道内から人口を集める都市でした。
道内の多くの地域が人口減少に苦しむ中でも、札幌だけは人口を維持し、増加させてきた。
しかし、もはや「札幌だけは増え続ける」という前提で市政を考えることはできません。
札幌市自身も、2021年以降、人口減少という現実に直面していると整理しています。
人口が減るということは、単に住民の数が減るという話ではありません。
- 働く人が減る
- 税収の伸びが鈍る
- 地域活動の担い手が減る
- 公共交通の利用者が減る
- 除雪を担う事業者や作業員の確保も難しくなる
こうした課題が、同時に表面化していきます。
冬季オリンピック・パラリンピック招致の事実上の断念、北海道日本ハムファイターズの札幌ドーム撤退、敬老パスの見直しなども、この時代を象徴する出来事でした。



もちろん、それぞれの是非をここで詳しく論じるつもりはありません。
ただ、これらの出来事に共通しているのは、かつては「札幌なら当然維持できる」「札幌なら引き受けられる」と思われていたものが、必ずしもそうではなくなってきたということです。
さらに、公共施設の更新問題も避けられません。
人口増加と市街地拡大の時代に整備してきた学校、区民センター、体育館、道路、橋梁、上下水道などは、今後一斉に老朽化していきます。

新しい施設を作ることよりも、既存施設をどう維持し、どう集約し、どこまで更新するのかが問われる時代になっています。
そして、札幌市民にとって最も身近で、かつ避けて通れない課題が雪対策です。
除排雪費用は増加し、燃料費や労務費も上がり、担い手の確保も難しくなっています。

雪は、札幌の魅力でもあります。
しかし、暮らしの現場では負担でもあります。
観光資源としての雪と、生活インフラとしての除排雪。この両方をどう扱うかは、次の札幌市政にとって極めて大きな課題です。
このように見ると、秋元市政12年は、単なる一人の市長の任期ではありません。
前半は、インバウンド、都心再開発、イベント拡充など、札幌が成長都市として前に進む時代でした。
しかし後半は、コロナ禍、人口減少、物価高、人手不足、公共施設更新、除排雪費用の増大といった、縮小時代の行政課題が一気に前面へ出てきた時代でした。
つまり、秋元市政は、札幌が「まだ成長できる大都市」から、「維持するために選択を迫られる大都市」へ移行していく過渡期の市政だったのではないでしょうか。
秋元市政で進んだもの
では、秋元市政で進んだものは何だったのでしょうか。
私は、大きく三つあると思います。
第一に、都心まちづくりと官民連携です。
秋元市政の分かりやすい成果として、札幌駅周辺、大通周辺を中心とした都心再開発があります。
北海道新幹線札幌延伸を見据えた札幌駅周辺の再整備、大通・創成川周辺のまちづくり、民間再開発と公共貢献を組み合わせた都心機能の更新など、札幌の中心部はこの十数年で大きく変わりました。
これは秋元市政だけで突然始まったものではありません。
札幌市の都心まちづくりは、以前から積み上げられてきた政策の延長線上にあります。
ただ、秋元市政の時期に、北海道新幹線札幌延伸、都心再開発、民間投資、観光需要の拡大といった要素が重なり、具体的な形として見えやすくなったのは事実でしょう。
札幌は北海道最大の都市です。
札幌の都心部が老朽化し、都市としての魅力や競争力を失えば、それは札幌だけでなく北海道全体にも影響します。
その意味で、都心再開発は単なる「駅前をきれいにする事業」ではありません。
札幌を北海道の拠点都市として維持するために、必要な都市更新だったと見るべきだと思います。
一方で、郊外部に住む市民から見れば、都心再開発の成果は必ずしも日常生活の実感に直結しません。
北区、清田区、手稲区、南区などでは、公共交通、買い物環境、雪対策、地域交流拠点、医療アクセスなど、都心とは別の課題があります。
都心が変わっていく一方で、郊外部のにぎわいや公共交通の維持については、目立った成果を実感しづらい。
これが正直な感想です。
第二に、総合計画・行政計画の整備です。
秋元市政は、計画行政としては非常に整っていた市政だと思います。
第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン、アクションプラン、未来創生プラン、都心まちづくり計画、公共施設等総合管理計画、雪対策関係の検討など、市政全体を体系的に整理する行政計画はかなり整備されています。
これは行政運営上、重要なことです。
市政は思いつきで動かすものではありません。
人口、財政、都市構造、福祉、交通、環境、防災など、多くの分野を横断しながら、中長期的な方針を持って進める必要があります。
その点で、秋元市政は「計画を作る力」は非常に高かったと言えるでしょう。
元市職員・副市長出身の行政型市長らしい部分でもあります。
ただし、ここには注意も必要です。
行政計画が整っていることと、市民生活の実感が改善することは別問題です。
どれだけ立派な計画があっても、実際にバスが減り、除排雪への不満が残り、地域施設が老朽化し、子育て世帯の負担感が解消されなければ、市民から見た評価は厳しくなります。
行政計画は、作ることが目的ではありません。
計画に書かれた方向性が、予算、人員、事業、地域現場にどこまで落とし込まれているか。
そこまで見なければ、市政の実力は評価できないと思います。
第三に、予算規模の拡大です。
秋元市政の間、札幌市の予算規模は大きくなってきました。
福祉、子育て、医療、都市整備、物価高騰対策、公共施設更新など、市役所が対応すべき課題は増えています。
したがって、予算が大きくなること自体は、直ちに悪いことではありません。
むしろ、人口規模の大きい政令指定都市として、必要な行政サービスを提供しようとすれば、一定の予算規模になるのは当然です。
問題は、その歳出増の中身です。
それは将来の税収や地域経済につながる成長投資なのか。
それとも、福祉費、人件費、公債費、施設維持費など、避けることのできない義務的・固定的経費の増加なのか。
あるいは、大型施設整備や公共施設更新に伴う将来負担なのか。
これらを分けて見なければなりません。
札幌市は今後、人口減少、物価高騰、人件費上昇、公共施設の老朽化といった条件の中で財政運営を行うことになります。
財政調整基金の残高低下も見込まれており、これまでと同じ感覚で「あれもやる、これもやる」と言い続けることは難しくなっています。
ここでも、秋元市政の成果と課題は表裏一体です。
- 都心再開発を進めた
- 行政計画を整備した
- 予算規模も拡大した
しかし、その先にあるのは、何を維持し、何を見直し、どこに重点投資するのかを選ばなければならない市政です。
秋元市政で進んだものを確認することは、同時に、次期市長が引き受ける負担を確認することでもあります。
その意味で、ここから先は「何を作るか」だけではなく、「何を維持し、何を選択するか」が問われる段階に入っていくのではないでしょうか。
次期市長への申し送り事項
では、次期札幌市長には何が引き継がれるのでしょうか。
もちろん、札幌市政の課題を挙げればきりがありません。
観光、経済、福祉、教育、交通、防災、文化、スポーツ、都市開発…
政令指定都市である札幌市が抱える政策分野は非常に広く、どれも簡単に片付けられるものではありません。
ただ、秋元市政12年の後に次期市長が引き受ける課題として、私は特に五つを申し送り事項として整理したいと思います。
申し送り事項1:雪対策
第一は、雪対策です。
次期市長が最初に向き合うべき最大級の課題は、除排雪だと思います。
札幌市民にとって、雪対策は単なる季節業務ではありません。
冬の通勤、通学、買い物、通院、物流、介護、子育て、地域活動…
札幌で暮らす以上、雪対策は市民生活そのものに直結します。
一方で、除排雪は非常に難しい政策分野です。
市民の不満が大きいからといって、人気取りのために際限なく除排雪水準を上げることはできません。
費用が増え、作業員や事業者の負担も増え、財政的にも持続できなくなるからです。
しかし逆に、財政が厳しいからといって、単純に除排雪を削ればよいという話でもありません。
- 生活道路が通れない
- 歩道が狭くなる
- 高齢者や障害のある方が外出しづらくなる
- 物流や救急にも影響が出る
これは、単なる「雪が多くて大変」という話ではなく、都市機能の維持そのものの問題です。
次期市長に求められるのは、除排雪を増やすか削るかという単純な二択ではありません。
- 市民生活をどう守るのか
- 事業者や作業員の担い手をどう確保するのか
- 財政負担をどの水準まで市民に説明できるのか
この三つを同時に見なければなりません。
雪対策は、札幌市民にとって最も身近でありながら、最も政治的に難しい課題の一つです。
ここから逃げる市長に、札幌の冬は任せられないと思います。
申し送り事項2:人口減少と財政環境の改善
第二は、人口減少と財政環境です。
札幌市は、北海道内では長らく人口を集めてきた都市でした。
道内各地で人口減少が進む中でも、札幌だけは人口を維持し、むしろ増加してきた。
そのため、どこかで「札幌は大丈夫」という感覚があったように思います。
しかし、もはや「札幌だけは増え続ける」という前提で市政を組むことはできません。
人口が減れば、税収の伸びは鈍ります。
働く人も減ります。
町内会、PTA、地域活動、商店街、除雪事業者、公共交通の担い手も減っていきます。
これは単に住民基本台帳上の数字が減るという話ではありません。
都市を支える人の総量が減っていくということです。
その中で、札幌市は福祉、医療、子育て、教育、公共交通、雪対策、公共施設更新など、多くの行政サービスを維持しなければなりません。
次期市長に求められるのは、人口が減っても暮らせる都市構造を作ることです。
そして同時に、
「あれもやります、これもやります」
ではなく、
「どのサービスを、どの水準で維持するのか」
を説明する能力です。
これは非常に厳しい話です。
市民にとって、行政サービスが増える話は聞きやすい。
しかし、行政サービスの水準や負担を見直す話は聞きたくない。
政治家にとっても、票になりにくい話です。
それでも、人口減少の現実と財政制約を語らずに政策を語ることは、もはや不誠実だと思います。
次の札幌市長には、夢を語る力だけでなく、制約を説明する力が必要です。
申し送り事項3:公共施設・インフラ更新
第三は、公共施設とインフラの更新です。
札幌市は、人口増加と市街地拡大の時代に、多くの公共施設や都市基盤を整備してきました。
学校、区民センター、コミュニティセンター、体育館、図書館、道路、橋梁、上下水道…
これらは市民生活を支える重要な資産です。
しかし、建てたものは必ず古くなります。
維持管理費もかかります。
改修も必要になります。
場合によっては、建て替えや統廃合も避けられません。
次期市長は、新しい施設を作る政治よりも、既存施設をどう畳み、どう長寿命化し、どこに集約するかという政治を避けられないと思います。
これは非常に人気が出にくい仕事です。
新しい施設を作る話は前向きに見えます。
しかし、施設を統合する、廃止する、機能を見直すという話は、必ず地域の反発を招きます。
それでも、人口が減り、財政が厳しくなり、施設が老朽化する以上、公共施設の再配置は避けて通れません。
例えば、私の地元である北区篠路には、篠路コミュニティセンターがあります。
地域の交流、講座、図書室、行事などを支える大切な施設です。
一方で、こうした地域施設も永遠に今の形で維持できるとは限りません。
老朽化、利用状況、維持費、交通アクセス、周辺施設との役割分担を考えながら、地域にとって必要な機能をどう残すのかを考えなければなりません。
重要なのは、単に施設を残すか廃止するかではありません。
地域に必要な機能は何か。
それをどの施設で、どの主体が、どの費用負担で維持するのか。
この議論を避けたままでは、公共施設更新問題は先送りされるだけです。
公共施設とインフラの更新は、派手な政策ではありません。
しかし、次の10年の札幌市政の核心になると思います。
申し送り事項4:都心と郊外のバランス
第四は、都心と郊外のバランスです。
都心再開発は必要です。
札幌駅、大通、創成川周辺などの都心部を更新し、札幌の都市機能を高めることは、北海道全体にとっても重要です。
札幌の都心が弱くなれば、人も企業も投資も集まりにくくなります。
その意味で、都心まちづくりを否定するつもりはありません。
しかし、札幌は都心だけで成立している都市ではありません。
北区、清田区、手稲区、南区、厚別区、西区、東区、白石区、豊平区…
それぞれの区には、それぞれの生活圏があります。
郊外部では、交通、雪、買い物、公共施設、医療アクセス、地域活動の担い手不足など、都心とは違う課題があります。
都心に新しいビルが建つ一方で、郊外ではバスが減り、冬道に苦労し、地域の商店が減り、公共施設の老朽化が進む。
これでは、市民生活全体としての札幌の魅力は高まりません。
- 都心の魅力を高めること
- 郊外で普通に暮らし続けられること
この二つは、どちらも札幌市政の課題です。
次期市長には、この両方をつなぐ視点が必要です。
特に私は、各区への裁量権の付与が重要だと思います。
札幌市は大きな都市です。
同じ札幌市内でも、中央区大通と北区あいの里では課題が違います。
清田区と手稲区でも違います。
南区と白石区でも違います。
全市一律の制度だけでは、地域の実情に合わない場面が出てきます。
だからこそ、区役所や地域のまちづくりセンターが、地域の実情に応じて動ける余地をもっと広げるべきではないでしょうか。
もちろん、区に丸投げすればよいという話ではありません。
市全体としての財源、制度、専門人材、都市計画との整合性は必要です。
しかし、市民が主体となって進める地域活動やまちづくりを、市役所が過度に管理するのではなく、見守り、自走できる環境を整える。
次期市長には、そうした地域自治の設計も求めたいと思います。
申し送り事項5:子ども医療費助成の所得制限撤廃
第五は、子ども医療費助成です。
札幌市では、子ども医療費助成の対象が高校生世代まで拡充されています。
これは大きな前進です。
子育て世帯にとって、子どもの医療費負担は決して小さなものではありません。
体調不良、けが、持病、アレルギー、歯科、眼科、耳鼻科…
子どもが育つ過程では、医療機関にかかる場面が何度もあります。
医療費助成の拡充は、子育て世帯の安心につながります。
その意味で、秋元市政で高校生世代まで対象が広がったことは、率直に評価すべきだと思います。
しかし、所得制限は残っています。
私は、この点について以前から関心を持ってきました。
子ども医療費助成は、単なる低所得者支援ではありません。
子どもを社会全体で支えるための基礎的な子育て支援です。
所得制限があると、一定以上の所得がある世帯は対象外になります。
しかし、札幌で子育てをする世帯にとって、住宅費、教育費、食費、交通費、光熱費などの負担は決して軽くありません。
共働きで一定の所得があるように見えても、実際の家計(手取)に余裕があるとは限りません。
慢性的な疾患があり日常的に通院せざるを得ないお子さんを持つ世代であればなおさらです。
また、所得制限は制度を複雑にします。
- 対象になるのか、ならないのか
- 前年所得で判定されるのか
- 世帯状況が変わった場合はどうなるのか
こうした確認や申請の手間も生じます。
子育て支援を分かりやすく、利用しやすくするという観点からも、所得制限の撤廃は検討されるべきです。
敬老パスの見直しが進み、子ども医療費助成も高校生世代まで拡充された中で、秋元市政で道半ばになっている大きな論点の一つが、この所得制限の撤廃ではないでしょうか。
もちろん、財源の問題はあります。
所得制限を撤廃すれば、対象者は増え、必要な予算も増えます。
だからこそ、ここでも財政制約から目をそらすべきではありません。
しかし、人口減少に向き合う都市として、子育て世帯にどのようなメッセージを出すのかは非常に重要です。
次期市長には、子ども医療費助成の所得制限撤廃を、単なる個別給付の話ではなく、札幌市の子育て政策全体の中で位置付けてほしいと思います。
以上の五つは、それぞれ別々の課題に見えます。
しかし実際には、深くつながっています。
雪対策には担い手と財源が必要です。
人口減少は税収、公共交通、地域活動に影響します。
公共施設更新には財政負担と地域合意が必要です。
都心と郊外のバランスは、札幌全体の都市構造に関わります。
子育て支援は、将来の人口と地域の持続可能性に関わります。
私が整理した次期市長への申し送り事項とは、単なる課題リストではありません。
札幌がこれからも暮らし続けられる都市であるために、何を守り、何を見直し、どこへ投資するのか。
その選択を始めるための論点だと考えます。
次の市長に必要なもの
では、次の札幌市長には何が必要なのでしょうか。
私は、派手なスローガンだけでは足りないと思います。
もちろん、都市には夢も必要です。
観光、文化、スポーツ、再開発、国際交流、新産業…
札幌が北海道の中心都市である以上、外へ向かって都市の魅力を発信し、人や投資を呼び込む姿勢は必要です。
しかし、それだけで次の札幌市政を担うことはできません。
これからの札幌市長に求められるのは、人口減少、雪対策、財政、公共施設更新、都心と郊外の格差、子育て支援を同時に扱う行政設計力です。
これは単に「行政に詳しい」という意味ではありません。
もちろん、市役所の仕組みを理解していることは必要です。
予算、条例、審議会、行政計画、議会対応、国や北海道との調整、区役所やまちづくりセンターとの関係…
これらを知らずに市政を動かすことはできません。
しかし、行政の論理だけで市政を運営すればよいわけでもありません。
行政組織は、どうしても前例、手続、調整、リスク回避を重視します。
それは大きな都市を安定して運営する上で必要な性質です。
一方で、人口減少と財政制約の時代には、前例どおりに事業を続けるだけでは対応できない場面が増えていきます。
秋元市長は、札幌市役所の内部をよく知る行政型の市長でした。その強みは、市政運営の安定性にあったと思います。
しかし次の市長に必要なのは、単なる官僚型の行政市長ではありません。
かといって、行政の論理を軽視し、民間感覚や経済成長だけを前面に出す市長でも不十分です。
札幌市は、民間企業ではありません。
採算の合わない地域にも道路があり、学校があり、公共施設があり、除排雪があり、福祉があります。
儲かるところだけに投資し、効率の悪いところを切り捨てればよいという組織ではありません。
一方で、行政だからといって、すべてを今までどおり維持できるわけでもありません。
人口が減り、働き手が減り、施設が老朽化し、財政に限りがある以上、札幌市は選択を迫られます。
次の市長に必要なのは、行政の仕組みを理解しながら、行政の惰性に流されないこと。
民間の活力を取り入れながら、都市経営を単なる採算論にしないこと。
都心の成長を進めながら、郊外で暮らす市民の生活を置き去りにしないこと。
市民に夢を語りながら、負担や制約から逃げないこと。
そのようなバランス感覚だと思います。
秋元市政12年の最大の申し送り事項は、札幌がいよいよ「成長する大都市」から「維持しながら選択する大都市」へ移るという現実なのではないでしょうか。
札幌は、まだ大きな可能性を持つ都市です。
北海道の人口、経済、大学、医療、文化、交通、観光の多くが札幌に集まっています。
その集積をどう生かすかは、これからも重要です。
しかし同時に、札幌だけが北海道の中で例外的に成長し続けるという時代でもありません。
- 都心をどう伸ばすのか
- 郊外をどう支えるのか
- 雪対策をどこまで維持するのか
- 公共施設をどう再配置するのか
- 子育て世帯にどのような安心を示すのか
- 市民にどのような負担を求めるのか
次の札幌市長は、これらの問いに正面から向き合わなければなりません。
それは、耳ざわりのよい話ばかりではないはずです。
しかし、耳ざわりのよい話だけで札幌市政を語れる時代は、もう終わりつつあるのかもしれません。
以上、次期札幌市長への申し送り事項についてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和8年6月28日
北海道庁生存戦略部
異端企画局
内部是正推進課非公式記録整理係
主事 振興局太郎
この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。


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