追記(2026年9月)
本記事は2026年2月1日に、北海道庁勤務時代に選挙事務の応援に携わった経験をもとに執筆したものです。実名での発信へ移行するにあたり、現在の北海道選挙管理委員会の案内等を確認し、立候補予定者説明会の制度上の位置づけについて不正確だった部分を修正しました。
関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の白川部けいたでございます。
標記の件につきまして、過去に選挙事務の応援に携わった際の経験をもとに、下記のとおり考察いたします。
立候補予定者説明会とは何のための場なのか
私が振興局で勤務していた頃、国政選挙などが行われる際には、所属を越えて選挙事務の応援に入ることがありました。
私の勤務先では、選挙管理委員会支所の事務を地域政策部門が担い、必要に応じて他課の職員も受付や会場運営などを分担していました。
その中で経験した業務の一つが、立候補予定者説明会の運営補助です。
当時の私は、この説明会をどこか「政治に関心を持った人が選挙制度を知る入口」のように捉えていました。
しかし、改めて制度を確認すると、この理解は正確ではありません。
北海道選挙管理委員会が2026年の衆議院議員総選挙に際して案内した説明会も、立候補を予定する政党・候補者に対し、立候補届出の手続を説明する場として位置付けられています。
つまり、最初から「候補者として具体的に準備を始めた人」に向けた実務説明会です。
その意味では、受付で立候補予定の有無を確認したり、供託や届出、公費負担などの具体的な説明を行ったりすること自体に、何ら不自然な点はありません。
今振り返れば、説明会そのものを「形式主義」と単純に批判するだけでは不十分だったと思います。
「立候補予定者」であることが前提の世界
とはいえ、当時その場にいた私が感じた独特の空気まで、すべてが勘違いだったわけではありません。
説明会は候補者向けの実務の場ですから、会場に入れば当然、話題は立候補届、選挙運動、供託、選挙公営、必要書類など、一気に具体的になります。
職員側も「立候補を予定している人」として説明します。
何となく政治に関心がある、制度を少し知ってみたい、まだ出るかどうかは決めていない――そういう段階の人にとっては、一歩足を踏み入れただけで急に世界が変わったように感じるかもしれません。
私自身、受付補助をしていた頃には、それを「そういう場なのだから当然だ」としか考えていませんでした。
それは実務上、間違った感覚ではなかったと思います。
一方で、外から見るようになってから、「候補者向けの説明会」と「政治参加に関心を持ち始めた市民」の間には、意外と大きな距離があることに気付きました。
説明会の運営が排除的なのではなく、説明会に来る以前の段階を支える仕組みが薄い。
問題があるとすれば、そこではないかと思います。
説明会に出席することと、立候補することは別である
もう一つ整理しておきたいのが、立候補予定者説明会の法的な位置づけです。
説明会は、選挙管理委員会が候補者側へ必要な実務をまとめて説明するための機会です。
説明会への出席そのものが、立候補を認めてもらうための許可手続ではありません。
実際、自治体によっては、説明会に出席しない立候補予定者に対して、別途、立候補の手引や必要資料を交付する旨を公式に案内しています。
北海道選挙管理委員会も、2026年衆議院議員総選挙では、立候補届出の手引や各種様式をウェブ上で公開していました。
したがって、「説明会に出なければ立候補できない」「説明会に参加した時点で候補者として扱われる」という制度ではありません。
ただ、政治の世界にこれまで接点がなかった人から見れば、選挙管理委員会へ問い合わせたり、候補者用の大量の資料を読み込んだりするだけでも心理的なハードルはあります。
制度上は開かれていても、初めて触れる人にとって分かりやすいかどうかは別の問題です。
問題は「その一歩手前」の入口が薄いこと
ここで私が今、問題だと感じているのは、立候補予定者説明会ではありません。
その一歩手前です。
政治に関心はある。
自分もいつか選挙に出る可能性を少し考えている。
しかし、供託とは何か、選挙運動と政治活動はどう違うのか、選挙公営とは何か、どれほどの準備が必要なのか、まだほとんど分からない。
こうした段階の人が、特定の政党や政治家に頼らず、中立的な情報だけを体系的に学べる入口は、もっと分かりやすくてもよいと思います。
もちろん、選挙管理委員会が誰かに立候補を勧めたり、候補者育成を担ったりすることは適切ではありません。
選挙の公平性を考えれば、行政はあくまで中立である必要があります。
だからこそ、「出てください」と勧誘するのではなく、「知りたい人が、自分の意思で制度を学べる」仕組みが重要になります。
現在でも各種の手引や様式は公開されています。
そのうえで、例えば、初めて立候補を考える人向けに、供託、届出、政治活動と選挙運動、公費負担などを平易に整理した案内があれば、制度への入口はさらに分かりやすくなるでしょう。
既存の資料を否定するのではなく、専門的な候補者実務へ進む前の「入門編」があるとよい、という話です。
形式主義より「段階に応じた入口」を
この記事のタイトルには、あえて「形式主義の極致」という強い言葉を残しています。
当時の私には、立候補予定者説明会という場が、最初から候補者であることを前提に進み、制度に人を当てはめていく行政らしい空間に見えていたからです。
しかし、今は少し見方が変わりました。
候補者向けの実務説明会が候補者を前提に進むのは、形式主義というより、その場の役割からすれば当然です。
問題は、一つの制度にすべての人を入れようとすることではなく、それぞれの段階に合った入口が用意されているかどうかです。
すでに立候補を決めた人には、正確で詳細な実務説明が必要です。
まだ迷っている人には、まず制度の全体像を知るための中立的で分かりやすい情報が必要です。
単に政治に関心を持った人には、選挙や議会、政治活動の仕組みに触れられる機会があってよいでしょう。
政治参加とは、最初から迷いなく「立候補します」と言える人だけのものではありません。
関心を持ち、調べ、迷い、そのうえで参加するかどうかを自分で決める。
その過程を誰かが後押しする必要はありませんが、少なくとも制度そのものが必要以上に分かりにくいものである必要もありません。
選挙制度の公平性を守りながら、政治参加を考える人が自分の意思で情報にたどり着ける入口を整える。
立候補予定者説明会を振り返った今、私が必要だと考えているのは、そうした「段階に応じた入口」です。
以上、立候補予定者説明会での経験を通じて感じた、行政手続と政治参加の入口について考察いたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和8(2026)年2月1日
この記事は、元道庁職員としての個人的体験と見解に基づいています。
行政・公務員の世界に関心のある方の参考になれば幸いです。
参考資料:北海道選挙管理委員会「第51回衆議院議員総選挙・第27回最高裁判所裁判官国民審査のページ」/ひたちなか市選挙管理委員会「立候補予定者説明会の日程について」


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