関係者各位
いつも大変お世話になっております。
元道庁職員の鈴木邪道でございます。
標記の件につきまして、下記のとおりお知らせいたします。
「道庁ってなんであんなに仕事が遅いの?」
これは道民からも、職員同士でもよく聞く言葉です。
元道庁職員としてお伝えすると、この“遅さ”は個人の怠慢ではなく、組織構造が生み出している必然です。
この記事では、私が現場で実際に見てきた「遅くなる理由」を、制度・文化・人間関係の三層から解きほぐしていきます。
責任の所在を曖昧にする文化
道庁の仕事が遅い理由の根本には、“みんなの責任にする文化”があります。
その象徴が、決裁ラインの異様な長さです。
私が経験した“最悪パターン”
最も長かった決裁ルートは、
原課①(4人) → 原課②(4人) → 私 → 主任 → 主査 → 主幹 → 課長 → 局長
というものです。
10人以上が関わり、しかも全員が赤入れをしてきます。
Excelのコメントなどではなく、印刷した紙に赤ペンです。
各階層で印刷 → 赤入れ → 直す → 再印刷 → 次の人へ回す…
これが延々続きます。
しかも指示は矛盾だらけです。

一文にまとめて

いや、三文に分けて

前のに戻して

この文は僕の好みじゃない
最終的に局長へ行く頃には、私が書いた文章の原型はどこにも残っていません。
これは、誰も「失敗したくない」からです。
“失敗しないこと”が目的化した管理職
中間管理職の多くは“波風を立てない”ことを仕事にしています。
若手に資料作成を丸投げしておきながら、決裁段階ではすべてひっくり返します。
しかし、これは「良い資料を作りたい」のではなく、 単に 「自分の責任にならなければいい」 という行動原理です。
その結果、若手のスキルは“活用しない前提”で運用されています
- Excelが得意でも
- RPAができても
- 新しいツールに詳しくても
使われるのは「雑務」と「体力」だけです。
- トナー交換
- お湯沸かし
- 新聞スクラップ
- コピー・配布
こうした雑務が若手の定位置になります。
若手がどれだけ能力を持っていても、 それが評価されることはほとんどありません。
道庁で求められるのは、
- 無茶な仕事量に耐える体力
- 矛盾する指示に怒らない耐性
- 無意味な会議に出続ける忍耐
つまり、若手の評価軸は スキルではなく耐久力です。
これは組織の根深い問題です。
“会議のための会議”が多すぎて、作業時間が残りません
道庁には会議が多すぎます。
- 会議のための会議
- 会議の資料を作るための会議
- 会議資料の説明会
この点については、以前記事にもしました。
そして、会議をこなすために会議が増えるという悪循環です。
振興局時代にはこんなスケジュールもありました。
- 市町村と会議
- 消防と会議
- 関連団体と会議
- 本庁との会議
これを数日~1週間かけて行います。
もちろん、その間は資料の修正ができません。
「この資料で会議をします」という決裁を取っているためです。
つまり、会議のせいで仕事が止まります。
電子化は“紙を増やす仕組み”
道庁の電子化は極端に遅れています。
- 予算の問題
- 部署の多さ
- “変える気がない”文化
その全てが影響していると思われます。
象徴的だったのが、紙と電子の二重管理です。
出勤簿の地獄
在職中、出退勤管理は“紙の出勤簿”が主流でした。
一方でPCログによる記録も併用されていました。
つまり、PCログを見ながら紙の出勤簿を突き合わせる作業が発生します。
さらに驚くべきことに、
職員ひとりひとりの出勤簿を閉じるクリアファイルには
ハンコを押す窓がカッターでくり抜かれている
という謎の仕様がありました。
電子化とは……?
もはや紙文化を維持するための口実にしか見えません。
構造がこうである以上、スピードは永遠に上がらない
道庁の仕事の遅さは個人の努力ではどうにもなりません。
- 決裁ラインの異様な長さ
- 管理職の「失敗したくない」文化
- 会議だらけで作業できない構造
- 電子化が遅れ、紙文化が残りすぎている現実
- 若手のスキルを活かさない運用方針
これらはすべて構造的問題です。
そして、道庁は巨大な組織で、 異動も多く、部署も膨大です。
1つの組織内部の職員の意思だけで変革できる規模ではありません。
さらに言うと
“変わりたい人”があまりに少ない
ここが最大のボトルネックです。
変えたくない人が多数派で、 その人たちが管理職になり、 改善したい若手は疲弊して去っていきます。
だから道庁は今も遅く、そして今後も遅いままです。
「道庁ってなんで仕事遅いの?」
その答えは簡単です。
遅くなるように、構造が設計されているからです。
以上、道庁の仕事が遅い原因についてお知らせいたしました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
令和7(2025)年12月15日
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北海道庁生存戦略部
異端企画局
内部是正推進課非公式記録整理係
主事 鈴木邪道
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